経済
2024年11月29日 06時18分

兵庫県知事選のSNS運用疑惑、斎藤元彦氏の主張と残る疑念

兵庫県知事選を巡るSNS運用疑惑の行方と残された疑念

2023年11月、斎藤元彦兵庫県知事が公職選挙法違反の疑惑に揺れる中、彼の選挙活動におけるSNS運用を巡る問題が注目を集めている。疑惑の中心には、SNS戦略を担当したとされるPR会社「merchu」の代表である折田楓氏が、自身のメディアプラットフォーム「note」で業務内容を公開したことがある。斎藤知事側は、法に触れるような業務を委託していないと主張しているが、果たして真相はどうなのか。

斎藤知事側の主張と疑惑の背景

斎藤知事側は、「merchu」に対しSNS運用を含む広報業務を委託したのではないかという疑惑に対し、ポスター製作などの非違法業務のみを依頼したと説明している。公開された請求書には、SNS運用を示唆する費目はなく、支払額は71.5万円に留まっている。知事側の弁護士である奥見司氏は、「斎藤陣営が主体となって運営した」と強調し、折田氏はボランティアとして関与したと説明した。

しかし、折田氏の「note」には「広報全般を任せていただいた」との記載があり、これが事実であれば、公職選挙法違反となる可能性もある。奥見弁護士は、折田氏の記述について「事実である部分とそうでない部分がある」とし、誇張があると指摘したが、具体的な矛盾点については明言を避けた。

契約書の不存在とそれに伴う疑念

口頭契約であったとされる今回の業務委託に関して、契約書が存在しないことへの疑念が浮上している。70万円程度の業務で契約書を作成しないことは不自然ではないかもしれないが、第三者に対する説明責任を果たす上で、契約書の存在は重要だ。さらに、守秘義務に関する契約も交わされていなかった可能性が高いと見られている。

この状況において、merchuが公式な声明を出さない限り、世間は斎藤知事側の説明を信じざるを得ない。しかし、折田氏が別の主張を展開する可能性も残されており、事態は未だに流動的だ。

残された疑念とその影響

斎藤知事の選挙活動におけるSNS運用に関する疑念は、以下の2点に集約される。まず、無償で行われたとされる支援活動が法に抵触しないのかという点。専門家の中には、企業が無償で専門的なノウハウを提供した場合、政治資金規正法に抵触する可能性があると指摘する者もいる。次に、折田氏やmerchuが斎藤知事を支援した動機に対する疑念である。

折田氏が斎藤知事を支援するに至った理由として、個人的な支持、別の形での見返りを期待した可能性、あるいは非公表の対価を得ていた可能性などが考えられる。特に、過去に兵庫県から報酬を受け取っていたことが報じられる中、将来的な利得を見越しての支援であったのかという疑念は払拭しきれない。

今後の展開と政治倫理の課題

本件に関して、現状では斎藤知事は法的責任を免れる形で事態を収束させるように見えるが、政治倫理に関する問題は引き続き残される。公職選挙法に対する遵守の在り方や、選挙活動における透明性の確保は、今後も問われ続けるだろう。特に、PR会社との契約内容やその透明性については、政治家の信頼性を左右する重要な要素だ。

今回の事例を通じて、政治とPR活動の関係性、そしてその透明性を高めるためには、より厳格な契約管理や情報公開が求められることが浮き彫りになった。斎藤知事にとって、今後の政治活動においては、こうした疑念を払拭するための具体的な対策が求められるだろう。今回の一件は、選挙活動における倫理観を再考する契機となると同時に、政治家と有権者の間に新たな信頼関係を築くための重要な一歩となる可能性を秘めている。

[鈴木 美咲]