経済
2024年11月29日 06時51分

日産の再生への挑戦:ゴーン時代の影響を乗り越えろ

日産の岐路:失われたDNAと再生の道を探る

日産自動車は、かつて「スカイライン」や「ブルーバード」など、多くのファンを魅了する名車を生み出してきました。しかし、最近の同社は経営不振に苦しみ、再びその輝きを取り戻すことが求められています。日産の経営不振の要因は何か、そして再生の道筋はどこにあるのでしょうか。

ゴーン時代の影響とその後の課題

日産の経営悪化は、カルロス・ゴーン氏がCEOとして主導した「日産リバイバルプラン」以降の戦略に起因していると指摘されています。ゴーン氏の下で、日産は効率化を重視し、ルノーとの協業を推進する一方で、国内外の工場閉鎖やコスト削減に注力しました。この結果、短期的な収益改善は達成されたものの、長期的なブランド力や製品開発の停滞を招いたと考えられます。

特に、ゴーン氏の指揮のもとでの電気自動車(EV)への過度な依存が、日産の現在の苦境を生んでいると言えるでしょう。北米市場では、EVよりもハイブリッド車(HV)の人気が高まり、日産はこのトレンドに対応できず、販売不振を招きました。さらに、日産はこの1年で北米での営業損失を計上し、グループ全体の利益が大幅に減少しました。

リストラと再生計画の課題

日産は2024年度に向けて、生産能力の20%削減と9000人の人員削減を発表しました。このリストラ策は、短期的なコスト削減には効果があるかもしれませんが、長期的には企業の活力を削ぐリスクがあります。多くの専門家が指摘するように、持続可能な成長を目指すには、単なるリストラではなく、製品開発力の強化が不可欠です。

また、日産の新たな経営計画「The Arc」は、既存の車種削減と国内外の自動車メーカーとの提携を増やす方針を示しています。しかし、この計画が実を結ぶためには、消費者が「欲しい」と思う車を再び生み出すことが求められます。そのためには、過去の成功体験に囚われず、時代のトレンドに合わせた革新的な製品戦略が必要です。

「モノ言う株主」との向き合い方

日産の経営再建において、アクティビスト株主の存在も無視できない要素です。「モノ言う株主」が増えることで、短期的な利益を求める圧力が高まる可能性があります。これに対抗するためには、経営陣が長期的な視点での計画を示し、株主の支持を得ることが重要です。財務の健全化とともに、製品開発の強化を進めることで、株主からの信頼を回復することが求められます。

過去の栄光を取り戻すために

日産が再び栄光を取り戻すには、単なる過去の名車の復刻版を出すだけでは不十分です。自動車業界は、環境問題や技術革新という課題に直面しており、日産はこれらを乗り越えるための創造的なアプローチが求められます。

例えば、競合他社が進めるEVやHV、さらには燃料電池車の開発に追随しつつ、日産ならではの付加価値をどう提供するかが鍵となります。これまでの経営戦略を見直し、消費者のニーズを的確に捉えた製品開発を進めることが、今後の日産の成長に繋がるでしょう。

まとめとして、日産は再び自動車ファンを魅了するブランドへと再生するために、現状の課題を直視し、革新的な製品戦略を構築することが急務です。経営陣は、短期的な利益にとらわれず、持続可能な成長を目指すための長期的なビジョンを掲げる必要があります。過去のDNAを再び活かし、未来のモビリティ市場での競争力を高めるための挑戦が、今こそ求められています。

[高橋 悠真]