松坂桃李と役所広司、新作映画『雪の花』で再び共演!時代劇が描く普遍的テーマ
松坂桃李と役所広司、映画『雪の花 ―ともに在りて―』で5度目の共演:時代劇が映し出す誠実な町医者の物語
映画『雪の花 ―ともに在りて―』が新たに公開され、主演の松坂桃李と役所広司が都内で行われた舞台挨拶でその魅力を語りました。この映画は江戸時代末期の福井藩を舞台に、天然痘という死に至る病と闘う実在の町医者・笠原良策を描いた作品です。松坂はこの町医者役を演じ、役所は彼の師である蘭方医・日野鼎哉を演じています。二人は過去に複数のプロジェクトで共演しており、今回で5度目のタッグとなります。
松坂桃李は「時代劇は久しぶりだったが、やはり時代劇には独特の魅力がある」と述べ、その魅力を改めて実感したと語りました。この映画の撮影現場は、黒澤明監督作品で長年助監督を務めた小泉堯史監督のもとで行われ、プロフェッショナルな環境が整えられていたといいます。役者が現場に入ると既に照明やカメラがセッティングされており、迅速な撮影が可能だったとのことです。
天然痘と闘う町医者の実話
物語の中心にいるのは、実在の町医者・笠原良策です。彼は天然痘の猛威から人々を救うために奮闘した医者で、その誠実さと決して諦めない姿勢が物語の核となっています。松坂はこの役について「誠実で志に向かって諦めない姿勢が、自分自身に重なった」と述べ、役を通じて現代にも通じるテーマに触れることができたとしています。
一方、役所広司は松坂の演技について「彼しか思い浮かばない役だった」と絶賛し、二人の間に流れる確かな信頼関係が作品にも反映されていることを示唆しました。役所が放ったセリフ「名を求めず、利を求めず」は、松坂の心にも深く刻まれ、役を越えて個人としての成長にもつながったといいます。
時代劇の魅力と現代への示唆
時代劇はその独特な世界観と歴史的背景から、多くの観客を魅了します。本作もまた、江戸時代という特定の時代を舞台にしつつ、普遍的な人間の感情や葛藤を描き出しています。松坂は「過去の時代の中にも現代と共通する課題があることを実感した」と述べ、未知の病に対する恐怖や不安は今も昔も変わらないと振り返りました。
この映画では、医者としての倫理観や使命感が深く掘り下げられており、観客に問いかけるものがあります。特に、現代社会における医療従事者の役割や、未曽有のパンデミックに対する人々の反応など、時代を超えて共通するテーマが浮き彫りにされています。
プロフェッショナルな撮影現場とその意義
本作の撮影は、プロフェッショナルな環境で行われました。特に、撮影を担当した上田正治さんは、黒澤監督作品でも長年カメラを担っていた実力派のキャメラマンでした。彼の撮影手法は「カメラは芝居をしてはいけない」という黒澤監督の理念を体現し、素直で自然な描写を心掛けたものでした。上田さんは本作が遺作となり、そのエネルギッシュな取り組みが映画に色濃く反映されています。
松坂は「上田さんにしか撮れない作品。山での過酷な撮影でも、エネルギーにあふれる方だった」と彼の功績を称え、本作が素晴らしいスタッフの手によって作り上げられたことを感謝しました。
舞台挨拶では、松坂が「監督とまだまだお仕事がしたい」と懇願する場面もあり、互いにリスペクトを持ちながら作品を完成させたことが伺えます。役所もまた、松坂との共演を毎回新鮮に感じており、これまでの共演が積み重ねた信頼によって、より深い演技が可能になったと語っています。
映画『雪の花 ―ともに在りて―』は、単なる時代劇に留まらず、現代社会にも通じる普遍的なテーマを持った作品です。松坂桃李と役所広司のコンビネーションが、観客に強い印象を残すことでしょう。映画を通じて、私たちは時代を超えた人間の本質を探ることができるのです。
[佐藤 健一]