経済
2024年11月29日 07時11分

GM、2026年からF1参戦決定!トランプ再選でEV市場はどう変わる?

ゼネラルモーターズのF1参戦とトランプ政権の影響:自動車業界の未来を占う

2026年からゼネラルモーターズ(GM)がキャデラックF1チームを立ち上げ、FIAフォーミュラワン(F1)世界選手権に参戦することが決定した。このニュースは、モータースポーツの頂点であるF1において、アメリカの自動車メーカーが新たな風を吹き込むことを期待させるものである。同時に、トランプ氏の再選が予測されるアメリカの政権交代が、世界の自動車業界、とりわけ電気自動車(EV)市場にどのような影響を及ぼすのかも注目されている。

GMはF1参戦を通じて、キャデラックブランドのグローバルな認知度を高めることを目指している。キャデラックは、F1に参戦する初のアメリカチームとして、2026年には11番目のF1チームとなる予定だ。GMのマーク・ロイス社長は、「F1は、GMのエンジニアリングの専門知識とテクノロジーにおけるリーダーシップを、これまでにない新たなレベルで発揮するためのグローバルな舞台」と述べており、F1への参入が技術革新の加速とブランドの進化を促す契機となることを期待している。

一方、アメリカの政治情勢も自動車業界に大きな影響を与えそうだ。トランプ氏が再び大統領に就任する可能性が高まる中、EV市場は不確実性に直面している。共和党が上下両院を制することで、バイデン政権が進めてきたEV関連の補助金制度が廃止される可能性が浮上している。現行の制度では、1台につき最大で7500ドルの補助金が提供されているが、これがなくなれば、EVの販売台数は大幅に減少する可能性がある。トヨタ自動車の豊田章男会長が予測するように、「EVの市場シェアは最大でも3割」という未来が現実味を帯びている。

アメリカにおけるEVの普及は、バイデン政権の「インフレ抑制法」によって支えられてきた。この法律は、EV購入補助金やEVおよびバッテリー開発に対する巨額の予算を組んでおり、過去最大規模の気候変動対策として位置づけられている。しかし、トランプ政権下でこの法律が縮小または廃止されることになれば、EV市場は再びガソリン車の復権を目指す動きが強まるだろう。

このような政治的な変動は、GMのF1参戦計画にも影響を与える可能性がある。GMがF1における技術革新を追求する一方で、アメリカ国内市場におけるEVの需要が減少すれば、同社の長期的な戦略に再考を迫られることも考えられる。特に、EV開発に対する投資が回収できない状況が続く場合、GMを含む多くのメーカーが損失を被るリスクがある。

米国の自動車業界は、すでに多額の資金をEVの開発と生産に投入している。GMをはじめとする大手企業は、過去3年間で1460億ドルもの投資を行っており、これが回収できなければ、企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性がある。このような状況下で、共和党が支配する州の政治家たちは、地元経済と雇用を守るために、EV関連の補助金を維持するよう次期政権に働きかける可能性がある。

GMのF1参戦は、技術革新の場として注目される一方で、アメリカ国内の自動車市場におけるEVシフトがどう推移するかが重要な鍵となる。EV市場の動向は、GMのF1プロジェクトの成功にも影響を及ぼす可能性があり、両者のバランスをどのように取るかが、今後の自動車業界の動向を左右するだろう。

最終的に、ゼネラルモーターズのF1参戦とアメリカのEV市場の行方は、世界の自動車業界全体にとって大きな試金石となる。GMがF1で得られる技術と経験をどのように活かし、変化する市場環境に対応していくのかが、今後の注目ポイントである。競争が激化する中、アメリカの自動車メーカーがどのようにして持続可能な成長を遂げるのか、その動向を見守りたい。

[山本 菜々子]