日産の試練と日本自動車産業の未来: 苦境をどう乗り越える?
日産自動車の苦境と日本自動車産業の岐路
日産自動車が再び厳しい局面に立たされています。2024年度上期の財務実績は営業利益が前年同期比で90%減少し、329億円にまで落ち込んでいます。これは、ちょっとした有名企業の1年分の売り上げが半期で吹っ飛んでしまったという驚くべき事態です。さらに、グローバルでの生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を予定しています。提携先の三菱自動車の持ち株の一部を売却することも発表されました。果たして日産はこの苦境を乗り越えられるのでしょうか?
日産の苦境は、米国と中国市場での販売不振に起因しています。特にアメリカ市場では、販売奨励金の額がトヨタの2.5倍、ホンダの1.6倍に達しており、低価格でなければ選ばれないブランドになっているとの指摘があります。しかし、安定したブランド力を持つためには、単に安さを売りにするだけでは足りません。消費者が本当に欲しいと思える製品を提供することが重要です。ここに日産の再生の鍵があるのではないでしょうか。
一方、日本国内でも日産のラインナップは「これでなきゃダメなんだ!」と思わせるモデルが少ないという批評がされています。「GT-R」や「フェアレディZ」は確かに特別な存在ですが、経営を支えるにはニッチすぎるという現実があります。日産は、「ノート」や「ノート オーラ」のような独自の価値を提供する車種を増やすことが求められるでしょう。
日本自動車産業の構造的課題
このような日産の苦境は、実は日本の自動車産業全体に通じる構造的な問題を浮き彫りにしています。週刊ダイヤモンドの特集では、自動車メーカーとサプライヤーの関係が非常事態にあると指摘されています。自動車メーカーがサプライヤーに過度な負担を求める一方、サプライヤーも受け身の姿勢を貫いている現状が描かれています。
特に、電気自動車(EV)市場での競争が激化する中、日本の自動車メーカーは従来のビジネスモデルを見直す必要があるでしょう。欧米のメガサプライヤーや新興メーカーBYD、テスラのように、柔軟かつスピーディに対応できる体制を整えることが重要です。日本の自動車産業は、長年の「すり合わせ」技術の強みを活かしつつ、変化に対応する力を養わなければなりません。
サプライヤーとの関係においても、単なる上下関係ではなく、互いに共創し合うパートナーシップを築くことが求められます。例えば、サプライヤーの役割を再評価し、技術革新や新しい価値の創造に向けた支援を行うことが考えられます。このような変革が、日産や他の日本の自動車メーカーにとっての再浮上の鍵となるでしょう。
とはいえ、日産がもつ「技術の日産」というブランドの価値は捨てがたいものがあります。重要なのは、その技術が消費者にどのような価値を提供するのかを明確にし、消費者のニーズに応える製品を開発することです。技術は手段であり、目的ではありません。消費者が日常の中でどのようにその技術を活用できるのか、その視点を持つことで、日産は再び消費者の心を捉えることができるかもしれません。
最後に、競争が激化し変化の激しい自動車業界において、日産を含む日本の自動車産業がどのように対応していくのか、これからも注目していきたいと思います。私たち消費者にとっても、日産の復活は自動車選びの選択肢を広げる意味で大いに期待したいところです。日産には、再び「手に入れたいブランド」としての地位を確立し、世界中の道路をその車で彩る未来を見据えてほしいものです。
[山本 菜々子]