富士山ローソン:観光スポットの安全対策とSNS映えの狭間で
富士山とコンビニの“良い距離感”を求めて:危険な横断と柵の攻防
皆さん、富士山とコンビニエンスストアを一緒に撮影するというユニークな組み合わせが、山梨県富士河口湖町で観光客を魅了していることをご存知でしょうか。特に訪日外国人観光客の間では、SNS映えする写真スポットとしてこの場所が注目を集めています。しかし、こうした注目度の高さが思わぬ問題を引き起こしています。
問題の舞台は、富士山とコンビニを一緒に写真に収めることができる、所謂「富士山ローソン」。このスポットでは、観光客がベストショットを求めて道路を危険に横断する姿が後を絶ちません。そこで、富士河口湖町は、訪問者の安全を確保するために新たな柵をコンビニ側にも設置することを決定しました。
安全対策の試行錯誤:幕から柵へ
これまで町は、観光客の迷惑行為を防ぐために、目隠しのための幕を設置したり、道路の横断を防ぐための柵を設けたりと、様々な対策を講じてきました。今年5月には幕を設置し、10月には柵を増設しました。しかし、それでもなお、観光客たちは道路を渡り続け、危険な横断が増えているのです。
渡辺英之町長は、「道路またぎは非常に危ないので、防護柵は非常に効果的なものではあると思います」と述べ、新たな柵の設置を進める意向を示しました。新たに設置される柵は、コンビニ店側の歩道沿いに幅およそ6メートル、高さ80センチのものが2つ設置される予定です。この対策によって、観光客が無理な横断を避け、横断歩道を利用するよう促したいとしています。
一方、町は「コンビニ富士山」の撮影を防ぐための幕を再設置しない方針を明らかにしました。渡辺町長は、「ごみのポイ捨ても改善し、撮影は順番を守るなど、外国人観光客に暗黙のルールが浸透しているように感じている」と述べ、観光客自身のマナー改善を評価しています。
観光と安全のバランスをどう取るか
観光地としての魅力と安全対策のバランスを取ることは、多くの観光地が直面する課題です。富士山ローソンも例外ではありません。この場所が特に注目される理由は、富士山という日本の象徴的な自然美を、日常的なコンビニエンスストアと共に写真に収めるという非日常的な体験ができるからです。訪問者にとっては、これが一生に一度の思い出となることも少なくありません。
しかし、安全が確保されなければ、その思い出は悲惨な事故に変わる可能性があります。観光客の安全を守りつつ、彼らに楽しんでもらうためには、町と観光客の双方が協力し合うことが不可欠です。
観光客に対する情報提供や教育が、今後の重要な課題となるでしょう。例えば、人気の観光スポットを訪れる前に、地元のルールやマナーについての情報を提供することが考えられます。スマートフォンを活用した多言語のガイドアプリや、現地での案内板の設置などが効果的かもしれません。
また、観光客自身も、訪れる土地に敬意を払い、地元の人々との共存を考慮することが求められます。観光は、その土地の文化や生活に触れる貴重な機会です。ですから、観光客の皆さんには、撮影に夢中になるあまり、周囲の安全を犠牲にしないよう心がけていただきたいものです。
富士山ローソンのような場所は、観光客と地元の人々が共に楽しみ、共存できる場であるべきです。町が設置を予定している新たな柵が、観光客の安全を守りつつ、彼らにとっての魅力を損なわないものであることを願っています。観光地としての未来を考える上で、この富士山ローソンの取り組みは、他の地域への貴重な教訓となるかもしれません。
[高橋 悠真]