企業は親を制する!新卒採用の「オヤカク」戦略が進化中
新卒採用における「オヤカク」の重要性とその進化
就職活動が進化する中で、企業と学生の間に新たな橋渡し役として「オヤカク」という手法が注目を集めています。この「オヤカク」とは、就職活動において学生の内定承諾を得る際に、保護者の意向を確認するプロセスを指します。今や「親を制するものは子を制す」と言われるほど、親の意見が就活生の意思決定に大きな影響を与えているのです。
親の意見がカギを握る理由
2025年卒および2026年卒の就活生を対象としたアンケート調査によると、就職先を選ぶ上で最も重視される意見は「親の意見」であることが明らかになりました。これには、親が子供のキャリア選択において保守的な姿勢を取りがちな背景があります。子供を安心して送り出せる企業を選びたいという親心が、就活生の選択に影響を与えるのです。
親が求めるのは、安定した給与や適正な労働時間、健全な職場環境といった条件です。したがって、企業側も親の不安を解消するための情報提供が求められます。これが「オヤカク」の基本戦略であり、内定辞退を防ぐための重要な施策となっています。
具体的な「オヤカク」の手法
「オヤカク」の方法は多岐にわたりますが、その中でも代表的なものをいくつか紹介します。
まず、電話確認です。直接親と対話し、企業の特徴や働き方を説明することで、親の不安を解消します。次に、個別面談です。電話では伝わりにくいニュアンスや信頼を対面で築き上げることができます。地方銀行や信用金庫などでは、親世代が顧客でもあるため、採用担当者が親の自宅へ訪問することもあります。
さらに、親向けオリエンテーション「オヤオリ」を開催する企業も増えています。これは複数の親を集めて企業説明会や懇親会を開くもので、親同士の交流も促進されます。
親心をつかむパンフレット戦略
「オヤカク」を成功させるためには、保護者向けパンフレットの作成も重要です。このパンフレットには、会社概要だけでなく、社内文化やキャリアパス、親が抱きやすい不安への回答などを盛り込みます。具体的な数字や実例を用いることで、親に安心感を与えることができます。
パンフレットが親の手に届くタイミングも重要です。内定後ではなく、最終面接の前に渡すことで、親が企業に対する理解を深め、自然と家族での話題になります。これにより、学生の志望度を高めることができます。
企業の視点から見る「オヤカク」
「オヤカク」は、企業にとっても内定辞退を防ぐ手段として重要です。就職情報会社の調査では、内定辞退対策として「オヤカク」を行っている企業は47.2%に上ります。また、保護者の意見を重視する学生が多いと感じる企業も44.0%に達しています。
企業としては、学生の就職意欲だけでなく、その親の意向にも対応する必要があります。このため、親が求める情報を的確に提供することが、企業の競争力を高める鍵となるのです。
時代が求める新たな就活の形
「オヤカク」は単なる内定承諾の確認手法に留まらず、企業と学生、そしてその家族との信頼関係を築くための重要なプロセスとなっています。親世代が求める安心・安全な職場環境を提供できることは、企業にとっても大きなアピールポイントです。
これからの時代、企業は単に学生の希望を叶えるだけでなく、その背後にある家族の期待にも応える必要があります。親心を理解し、その期待に応えることが、未来の人材を確保するための重要な戦略となるでしょう。
こうした背景を踏まえ、「オヤカク」は、今後もますます注目される手法となることでしょう。親を通じて学生を動かすこの戦略は、まさに「親を制するものは子を制す」といわれる時代の象徴とも言えるかもしれません。企業がこの手法を巧みに活用することで、より良い人材を確保し、持続的な成長を遂げていくことが期待されます。
[田中 誠]