国際
2024年12月03日 06時11分

ICC所長・赤根智子氏の孤独な戦いが話題に:国際法の灯を守る使命とは?

ICC所長の赤根智子氏、法の守護者としての孤独な戦い

オランダ・ハーグで2日に行われた国際刑事裁判所(ICC)の総会で、赤根智子所長が発した言葉は、まるで嵐の中で灯台のように、国際法と人権の灯を守るための孤独な戦いを象徴していました。「脅迫や圧力にさらされている」。これは単なる宣言ではなく、現代の国際政治が抱える複雑な問題を浮き彫りにするものでした。

ICCは、国際的な法の秩序を維持するための最後の砦として、戦争犯罪や人道に対する罪を追及してきました。しかし、今回の演説で明らかになったのは、その使命がいかに困難であるかということです。特にロシアのプーチン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状の発行は、国際政治の荒波をさらに荒れ狂わせました。ロシア政府は怒りを露わにし、赤根所長を指名手配するという報復措置に出ました。この動きは、まさに古代の英雄がドラゴンに立ち向かうような、法の守護者としての赤根氏の孤独な戦いを象徴しています。

圧力と脅迫の狭間で揺れる国際法

ICCの独立性を脅かす圧力は、単にロシアやイスラエルにとどまりません。例えば、アメリカの一部議員がICCに対して制裁を科そうとする動きは、ICCをまるでテロ組織であるかのように扱う姿勢を示しており、非常に深刻な問題です。ICCは、法の下の平等を原則としていますが、このような圧力は、その理念を揺るがしかねません。

さらに、イスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状発行に関する議論は、G7外相会合でも取り上げられましたが、各国の見解の相違により、共同声明に盛り込まれることはありませんでした。これは、国際社会がいかに統一的な対応を取ることが難しいかを示しています。まるで、全員が異なる楽譜を持ってオーケストラを演奏するような状況です。

赤根所長の訴えとICCの未来

赤根所長は、ICCが「存続の危機にさらされている」と述べ、締約国の結束を強く呼びかけました。この呼びかけは、単なる危機感の表明ではなく、国際社会に対する緊急の訴えです。ICCの使命は、残虐行為の被害者の尊厳と権利を守ることであり、そのためには、国際的な支持と協力が不可欠です。

しかし、現実は厳しく、各国の利害や政治的な思惑が絡み合う中で、ICCが直面する課題は山積しています。国際法の遵守と基本的人権の保護という理想が、政治的な圧力や脅迫によって損なわれる危険性は高まる一方です。そして、これらの圧力は、ICCの独立性と公平性を脅かすだけでなく、国際的な法の秩序そのものを揺るがす可能性を秘めています。

法の力を信じて

赤根所長の「いかなる状況でも法律のみを遵守する」という言葉は、ICCの使命を堅持する意志を示しています。ICCは、これまでもそしてこれからも、法の力を信じ、国際的な正義の実現を目指し続けるでしょう。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。

[田中 誠]