エンタメ
2024年12月03日 10時10分

映画『TATAMI』が描くイラン女子柔道選手の勇気と葛藤、Xで話題に!

イランの柔道マットで繰り広げられる、見えざる戦いの物語『TATAMI』

映画『TATAMI』は、2025年2月28日に日本で公開される予定の作品で、政治とスポーツが交錯する舞台で繰り広げられる、イラン代表女子柔道選手たちの苦悩と決断を描いた社会派ドラマです。監督はイスラエル出身のガイ・ナッティヴと、イラン出身のザーラ・アミールという異なる国籍と視点を持つ二人が手を組み、秘匿状態で撮影を行いました。イラン国内での上映は不可能とされるこの映画は、まさに勇気と挑戦の結晶です。

スポーツと政治の狭間で揺れる選手たち

『TATAMI』は、ジョージアの首都トビリシで開催される女子世界柔道選手権を舞台に、イラン代表選手レイラ・ホセイニとコーチのマルヤム・ガンバリが金メダルを目指す物語です。しかし、彼女たちはイラン政府から、敵対国イスラエルの選手との対戦を避けるために棄権を命じられます。この命令は、彼女たちのスポーツマンシップを試し、さらには自分自身と家族の安全を脅かすものでした。

この状況は、スポーツ界における政治的圧力の象徴とも言えます。過去にも、オリンピックや世界選手権において、政治的理由で試合を棄権する選手たちがいましたが、それは常に大きな議論を呼び起こしてきました。選手たちは、国の代表であると同時に個人としての自由と尊厳を持つ存在であり、その狭間で葛藤する姿が『TATAMI』で描かれています。

女性アスリートの声を届ける

イラン社会において、女性の地位は歴史的に抑圧されてきました。それゆえ、女性アスリートが国際舞台で活躍すること自体が、彼女たちの強さと抵抗の証明でもあります。映画『TATAMI』は、そんな女性たちの声を代弁する作品であり、スポーツを通じて社会の変革を求めるメッセージを送っています。

監督のザーラ・アミール自身も、イランの女性としての視点を持ち、この作品に深い感情を込めています。彼女は劇中でコーチのマルヤム役を演じ、指導者として選手を支えるだけでなく、個人としての葛藤も表現しています。アミールは、第75回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した実力派であり、彼女の演技はこの映画の大きな見どころの一つです。

映画を通じた国際的な対話の場を提供

『TATAMI』の制作過程は、まるでスパイ映画のような緊迫感を持って進められました。撮影に関わったイラン出身者は全員亡命を余儀なくされ、イラン国内での上映は叶わないという現実があります。それにもかかわらず、この映画は国際的な映画祭で高い評価を受け、東京国際映画祭では審査委員特別賞と最優秀女優賞を受賞しました。

ナッティヴ監督とアミール監督は、「この映画が憎しみや相互破壊を超えて、未来を共に築こうとする全ての人々への贈り物になることを願っています」と声明を発表しました。この言葉には、映画が単なるエンターテインメントではなく、国際的な対話の場を提供する力を持っているという信念が込められています。

映画『TATAMI』は、柔道という競技の枠を超え、人間としての尊厳や自由を問う作品です。スポーツを通じた国際的な交流は、時に政治的な障壁によって妨げられますが、それでもアスリートたちはその壁を乗り越えようとする。『TATAMI』は、そんな彼らの姿を描いた物語であり、観る者に深い感動を与えることでしょう。

[伊藤 彩花]