経済
2024年12月03日 18時50分

高島屋堺店閉店が示す地方百貨店の未来:新たな挑戦「HiViE」堺東

高島屋堺店の閉店が示す地方百貨店の試練と未来への一歩

高島屋は、かつて隆盛を極めた堺店の営業を2026年1月7日に終了すると発表しました。この発表は、地方百貨店の苦戦が続く中での新たな一歩であり、その背景には日本の消費者行動や地域経済の変化が浮き彫りになっています。

高島屋堺店は、南海高野線の堺東駅に1964年に開業し、長きにわたり大阪南部の地域ニーズに応えてきました。しかし、売上高は1991年度の約300億円をピークに、直近の2023年度では103億円に縮小。営業赤字が続く中での閉店決定は、地方都市や郊外の百貨店が直面する現実を象徴しています。

百貨店業界の変遷と地方の現状

かつては地域のランドマークとしての存在感を放っていた百貨店も、時代の流れには逆らえません。大都市の旗艦店が訪日客や富裕層の消費に支えられ好調を維持する一方で、地方や郊外の百貨店は人口減少や消費者の購買行動の変化に直面しています。オンラインショッピングの台頭や、ライフスタイルの多様化が、これまでの店舗形態に大きな影響を与えているのです。

高島屋は、今年7月に岐阜高島屋を閉鎖するなど、地方店の整理を進めてきました。これは地方の経済状況が好転しない限り避けられない流れであり、業界全体が効率化と再編を迫られています。

南海電鉄の挑戦:新たな「HiViE」堺東の可能性

高島屋の撤退を受け、南海電気鉄道は堺東駅ビルの改装を計画中です。新たに商業施設「HiViE(ヒビエ)堺東」として生まれ変わることで、地域の活性化を図ろうという試みです。高島屋が使用していた約3割のスペースを中心に、新たなテナントを誘致し、駅周辺のにぎわいを再創出する狙いがあります。

この「HiViE」は、地域住民にとっての新たなランドマークとなることを目指しています。具体的な店舗名はまだ明らかにされていませんが、多様なニーズに応えるための一大プロジェクトとして期待されています。再開発は地域の雇用を維持する上でも重要であり、元高島屋の従業員156人も配置転換などで雇用が維持されるとのことです。

未来を見据えた動きと地域の再生

地方百貨店の閉鎖は一見、地域経済にとって打撃のようにも思えますが、視点を変えれば新たな可能性を模索する転換点でもあります。南海電鉄による「HiViE」のようなプロジェクトは、地域の歴史や文化を尊重しつつ、新しい時代に即した商業空間を創出する試みと言えるでしょう。

再開発が成功するかどうかは、地域コミュニティのニーズをどれだけ正確に捉えられるかにかかっています。多様な店舗やサービスを提供することで、地域住民が日常的に訪れたくなるような場所を築くことが求められます。これは一種の地域再生の試みであり、地方都市が抱える課題を解決する鍵の一つとなるかもしれません。

このように、百貨店の閉店と再開発という一見相反する動きが、実は地域活性化の連鎖を生み出す可能性を秘めています。高島屋堺店の閉店がもたらす影響は、地方における新たな商業の形を模索するきっかけとなり、今後の地域経済の行方を占う上で重要なターニングポイントとなるでしょう。

[山本 菜々子]