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2024年12月03日 22時21分

マイナンバーカード保険証利用の未来:デジタル化の波にどう乗る?

デジタル化の波に乗るか、沈むか? マイナンバーカード保険証利用の現状と未来

日本政府は、デジタル時代の幕開けを告げるかのように、マイナンバーカードに保険証機能を統合する政策を推進しています。この「デジタルとアナログのベストミックス」を掲げる施策には、紙の保険証の新規発行停止といった具体的な動きが伴っており、2025年12月までの完全移行を目指しています。しかし、ここで一つの疑問が浮かび上がります。それは、進行中のこのデジタル化プロジェクトにおける成功の指標、すなわちKPI(Key Performance Indicator)が設定されていないという点です。

KPI不在のデジタル化、見えないゴールに向かって

平将明デジタル大臣は、マイナンバーカードの保険証利用に関するKPIについて、「現時点では設定していない」と発言しています。KPIがないということは、デジタル化の成功がどのように測定されるのかが不明確であることを意味します。これは、目の前にゴールテープが見えないマラソンを走るようなものです。政府はこの点について、「デジタルとアナログのベストミックス」を実現するための広報活動やキャンペーンを進め、国民がスムーズに移行できる環境を整えることに注力しています。

しかし、国民の間にはまだ不安が残っています。これは、マイナンバーカードが普及し始めた2016年からの懸念事項であり、特に個人情報の扱いに対する不安が根強く存在します。それに加え、保険証としての利用が進まないことで、医療機関での混乱が生じる可能性も指摘されています。

特急発行制度の開始、その意図と効果

一方で、政府はマイナンバーカードの「特急発行・交付制度」を開始しました。これは、通常よりも迅速にカードを発行するもので、特にイレギュラーな状況に対処するためのものです。この制度は、乳児の新規交付や刑事施設からの出所後の交付など、特定の状況を想定しています。通常の発行と異なり、手続きは市町村や特別区の指定窓口で行う必要があります。

この特急発行制度は、デジタル化のスムーズな進行を支えるための施策の一つですが、全ての国民にとって有効な解決策ではありません。むしろ、特定のケースに対応するためのものであり、一般の市民が恩恵を受けることは少ないでしょう。それでも、こうした制度があることで、デジタル化の恩恵を受けやすい環境が整えられつつあるのは事実です。

未来の医療とデジタル化の可能性

デジタル化が進む中で、医療の現場がどのように変化するのかは、政府だけでなく国民全体が関心を寄せるところです。マイナンバーカードの保険証利用は、医療情報の管理を効率化し、医療サービスの質を向上させる可能性を秘めています。たとえば、ICチップにより、患者の医療履歴が速やかに確認できるようになれば、診療の効率化や誤診の減少につながるでしょう。

しかし、一方でデジタル化にはリスクも伴います。サイバーセキュリティの脆弱性や、個人情報漏洩のリスクが常に存在するため、これらに対する対策は不可欠です。平デジタル大臣も「不正を働こうという人から見ると、非常につけ込む隙のある仕組み」と指摘しており、この穴をふさぐことが急務であるとしています。

デジタル化の先にある暮らし

日本のデジタル化政策がどのように進化していくのかは、今後の社会のあり方にも大きく影響します。マイナンバーカードの普及が進めば、医療だけでなく、行政手続きや日常生活の様々な場面で利便性が向上することが期待されます。しかし、そのためには国民の信頼を得ることが不可欠です。政府は透明性を持ち、国民の声を聞きながら慎重に進める必要があります。

こうした動きを見ていると、デジタル化という波に乗るか、沈むかの選択が、今私たちの目の前にあることを実感します。どちらを選ぶにせよ、私たちの未来の在り方を決める大きな分岐点であることに変わりはありません。そして、その選択は、私たち一人ひとりがデジタル化をどのように受け入れるかにかかっているのです。

[伊藤 彩花]