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2024年12月04日 07時41分

韓国初の非常戒厳宣言!尹大統領の決断に法曹界と国民が揺れる

韓国で非常戒厳宣言、尹大統領の決断に揺れる国民と法曹界

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が非常戒厳を宣言し、波紋が広がっています。これは1987年の民主化以降初めてのことであり、韓国憲政史上では17回目の非常戒厳となります。今回の決断は、国民や法曹界、そして国会を巻き込み、政治的な混乱を招いています。

尹大統領が非常戒厳を宣言した背景には、野党「共に民主党」が推進する公職者弾劾や予算削減などが行政府の麻痺を引き起こしているという認識があります。しかし、法曹界はこの理由が憲法に規定されている「戦時・事変またはこれに準じる国家非常事態」に該当するのか疑問を呈しています。特に、ソウル大学法学専門大学院のハン・インソプ教授は「非常戒厳の理由は到底成立しない」と指摘し、今回の非常戒厳が大統領弾劾理由の十分条件を満たす可能性があると述べています。

市民の反応:21世紀の韓国で起こり得ることか

市民たちの反応もさまざまです。過去の歴史書でしか見たことがない戒厳令を目の当たりにし、驚きと不安を隠せない人々が多くいます。例えば、25歳のユンさんは「非常戒厳宣言のニュースが流れ、非常に驚いた」と語り、21世紀の韓国でこのようなことが起こるとは思わなかったと不安を訴えています。70歳のタクシー運転手のキムさんも「数十年ぶりにこのような状況が国で再現されるというのが信じられない」と話しました。

一方で、保守的な地域である慶尚南道では、非常戒厳に反対する声も聞かれました。50代の会社員イさんは、テレビで報道を見て「最後まで残っていた保守の心まで変える判断だ」と憤りを覚えたと述べています。

法曹界が指摘する問題点

法曹界は今回の非常戒厳宣言に対して厳しい目を向けています。高麗大学法科大学院のチャ・ジナ教授は「戦時・事変またはこれに準じる国家非常事態とは、軍兵力や警察力で秩序が維持できない状況を意味する」とし、今回の非常戒厳がそのような状況に該当するかどうか疑問を呈しました。さらに、戒厳法に基づく手続きが適切に行われているのかも問題視されています。ある裁判官出身の弁護士は、閣議を経ていない場合は明白な戒厳法違反であると指摘しています。

また、戒厳司令官が司法権を持つことになり、進行中の裁判に影響を及ぼす可能性もあります。これにより、裁判が中断される可能性があると予想されています。特に、情報・保安業務を掌握する機関を含む行政機関と司法機関は、ただちに戒厳司令官の指揮・監督を受けなければならないと戒厳法第8条第1項に定められています。

国会と政局の混乱

非常戒厳宣言後、国会はすぐに対応に乗り出しました。与党の「国民の力」も含め、野党だけでなく与党内からも反対の声が上がり、政局は大混乱に陥っています。特に、国会の禹元植(ウ・ウォンシク)議長は戒厳令解除を要求するために本会議を直ちに招集しました。与党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表も戒厳宣言に反対の立場を明らかにし、尹大統領の決定が政局に与える影響は大きなものとなっています。

尹大統領は今回の非常戒厳を通じて、「亡国の奈落に落ちようとしている自由大韓民国を再建して守り抜く」と述べていますが、この措置が自由と民主主義の維持にどのように寄与するのか、国民や法曹界からの疑問は尽きません。戒厳令の発動が国民の自由を制限し、政治的な対立をさらに深める結果となるのか、それとも本当に必要な措置だったのかは、今後の動向を見守る必要があります。

[伊藤 彩花]