韓国戒厳令騒動で「コリアディスカウント」再燃!投資家の不安拡大
韓国株式市場の動揺と戒厳令騒動:投資家が感じる「コリアディスカウント」
韓国の政治的混乱が経済市場にどのような影響を及ぼすのか。2024年12月4日、韓国証券市場は外国人投資家の投げ売りに見舞われ、KOSPIは1.44%下落しました。この背景には、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による突然の戒厳令宣布とその解除があり、これが投資家心理を大きく揺さぶったのです。
韓国株式市場の動揺は、かねてからの「コリアディスカウント」問題を再び浮き彫りにしました。韓国政府は、この「コリアディスカウント」からの脱却を目指し、企業ガバナンスの改善や市場の透明性向上といった数々の施策を打ち出していましたが、今回の騒動はその流れに水を差す結果となりました。
戒厳令の発令と解除は、まるで嵐のように市場を駆け巡り、外国人投資家は韓国株のリスクを再評価することとなりました。マーケットは一時的に安定しましたが、投資家のリスク意識は高まり、ウォンや韓国株に対するリスクプレミアムの上昇が懸念されています。シンガポールのグラスホッパー・アセット・マネジメントのダニエル・タン氏が述べたように、「投資家はより大きなリスクプレミアムを要求する可能性がある」という声が聞かれるほどです。
戒厳令の影響と韓国市場の不安定さ
韓国市場での外国人投資家の投げ売りは、KOSPIだけでなく、新興企業向けのKOSDAQ市場にも波及しました。KOSDAQは1.98%の下落を記録し、KOSPIとKOSDAQ構成銘柄の76%が値を下げました。特に、サムスン電子や新韓持株、ハナ金融持株といった主要銘柄が外国人投資家によって売却されました。
一方で、尹大統領が戒厳令を迅速に解除したことにより、株価はおおむね安定を取り戻したという見方もあります。金融当局は市場安定化のために、10兆ウォン規模の証券市場安定ファンドを用意し、必要に応じて債券市場・資金市場への支援も行う準備を整えています。しかし、これが本当に「安定」なのか、それとも嵐の前の静けさなのか、投資家たちは慎重に見極めようとしているのです。
ウォンの動向と外国投資家の視線
戒厳令騒動の中、ウォンは一時的に急落したものの、その後、政府の市場安定化への取り組みを受けて上昇しました。しかし、ウォン・ドル為替レートは依然として不安定であり、これが長期的な外資の流出につながる可能性が懸念されています。INGのアジア太平洋地域リサーチ責任者、ロブ・カーネル氏は「ウォンが特に好調に推移するのは難しい」と述べ、政治的な不安が経済の低迷を助長していることを指摘しました。
ウォン安が続くと、韓国の輸出産業にとっては一見有利に思えるかもしれませんが、実際のところ、外資の流出を招き、株価の低迷を長引かせる要因となるのです。特に、韓国が「先進国市場」としての地位を確立しようとする取り組みにとって、このような不安定さは大きな障害となります。
「コリアディスカウント」と投資家の冷やかな視線
韓国の政治的不安定さは、ただの一時的なマーケットの動揺ではなく、深刻な「コリアディスカウント」を招きました。これは、韓国株が他国の株式と比べて割安に評価されている現象を指し、この背景には北朝鮮リスクや同族経営の財閥によるビジネス環境、さらに今年加わった中国リスクなどが挙げられます。
韓国株式市場は8月以降、海外マネーの流出が続いており、今回の騒動でその流れが加速する可能性もあります。ジャナス・ヘンダーソンのサト・ドゥフラ氏は、「この不透明な状況で韓国に投資するつもりはない」と述べ、韓国市場に対する投資家の冷やかな視線を象徴しています。
韓国政府が「コリアディスカウント」から脱却するためには、政治的な安定を取り戻し、経済政策を一貫して実行することが求められます。尹大統領の戒厳令騒動は、まさにその逆を行くものであり、今後の韓国市場の行方は予断を許さない状況です。
韓国市場の動揺は、一過性のものにとどまるのか、それとも長期的な影響を及ぼすのか。投資家たちは、韓国政府の次の一手をじっと見守っています。市場が再び安定を取り戻すまで、しばらくは波乱含みの展開が続くことでしょう。
[松本 亮太]