「ゆきてかへらぬ」広瀬すず主演映画で中原中也の詩が蘇る!キタニタツヤの音楽が新次元を提供
時代を超えて響く愛と詩:キタニタツヤが描く「ゆきてかへらぬ」の新たな物語
中原中也と言えば、彼の詩が持つ独特の哀愁と鋭さで多くの人々を魅了してきた詩人です。彼の作品は時に人々の心を激しく揺さぶり、時には優しく癒します。詩人としての中也の生涯自体が、まさに映画の一場面のようにドラマティックであり、彼を取り巻いた人々もまた、その劇的な人生の一部を共有していました。
壮絶な愛と青春の物語
映画「ゆきてかへらぬ」は、実在した女優・長谷川泰子(広瀬すず)、詩人・中原中也(木戸大聖)、そして評論家・小林秀雄(岡田将生)の3人の若者が織り成す愛と葛藤の物語です。大正時代という、文化が華やかに咲き誇った時代を背景に、彼らの情熱的で時に破滅的な関係が描かれます。映画の脚本は『ツィゴイネルワイゼン』や『セーラー服と機関銃』で知られる田中陽造によって40年以上前に書かれ、多くの監督たちが映画化を熱望してきたもの。今回、根岸吉太郎監督の手によって、16年ぶりの長編映画として実現しました。
この映画の中で描かれるのは、愛という感情が持つ複雑さと、時にそれがもたらす破壊的な力です。泰子、中也、小林の3人のキャラクターは、それぞれ異なる立場から愛を求め、時にそれに翻弄されます。彼らの関係は、まるで無限のダンスを続けるような緊張感と儚さを持ち、観る者の心を掴んで離しません。
音楽が紡ぐ新たな次元
映画の主題歌「ユーモア」は、キタニタツヤが中原中也の詩に触れ、その文学的な世界観を音楽として昇華させた作品です。キタニは、詩を書くことを「現実をユーモラスに捉えて解釈し、言葉に出力する営み」と表現します。このユーモアは、単に「面白おかしく」という意味ではなく、現実に隙を見出すことで安らぎを与える力を持つのです。
映画の中で、この主題歌はどのように観客の心に響くのでしょうか。広瀬すずは、楽曲について「映画の余韻が残りつつ、後半は違う世界観でちょっと面白いバランス感の楽曲で素敵だ」とコメントしています。まるで映画全体を象徴するかのように、楽曲は観る者を異なる感情の波へと誘います。
木戸大聖もまた、「3人のキャラクターのどの人を歌詞の主人公においても当てはまる」と語り、楽曲の普遍性を強調しています。愛というテーマは、時代や個々の背景を超えて、様々な形で人々に共鳴するものです。キタニの「ユーモア」は、現代に生きる私たちの心にも何かしらの響きを与えてくれるでしょう。
大正時代と現代を繋ぐもの
映画「ゆきてかへらぬ」は、大正時代という特異な文化背景を持ちながら、現代にも通じる普遍的なテーマを描いています。中原中也の詩が持つ力強さと、彼の生き様が映画の中でどのように再現されるのか。観客は、彼の詩とともに、時代を超えて愛と青春の物語に浸ることができるでしょう。
キタニタツヤの音楽は、中也の詩の持つ深奥を探り、映画の物語に新たな次元を与えます。彼の音楽を通して、私たちは中也の詩に新たな解釈を見出し、言葉を超えたメッセージを受け取ることができるのです。
映画の公開が待ち遠しい今、私たちはこの美しい物語がどのように心に響くのか、期待を胸に劇場の暗闇へと足を運ぶことでしょう。中原中也が詩で紡いだ世界と共に、キタニタツヤが奏でる音楽の魔法に身を委ねるひとときが、まもなく訪れるのです。
[山本 菜々子]