カレー粉で地球を救う!?「COF-999」の驚異的なCO2吸収能力
黄色い粉と地球温暖化の戦い
カレー粉のような黄色い粉が、地球温暖化を救う可能性があると聞けば、リスボンの船乗りもびっくりするだろう。カリフォルニア大学バークレー校の科学者チームが開発したこの粉、正式には「COF-999」と名付けられた共有結合有機構造体(COF)だ。何がそんなにすごいのかと言えば、この粉はまるで大木のごとくCO2を吸収する能力を持っている。しかも、わずか200gの粉が年間20kgものCO2を吸収するという驚異的な性能だ。
この粉は、走査型顕微鏡で見ると、何十億個もの穴が開いた小さなバスケットボールのように見えるという。炭素と窒素で構成された六角形の構造体が、酸性のCO2分子を効率よく除去する仕組みだ。実験では20日間にわたりCO2濃度の高い空気にさらされたが、通過した空気からはCO2が検出されなかったという。まさにカレー粉のように万能で、環境問題の救世主になり得る。
COF-999の持つ可能性は、DAC(直接空気回収)技術に限らない。既存の製油所や火力発電所でCO2を回収・貯留するシステムにこの素材を導入すれば、CO2除去の効率が格段に上がるだろう。通常の炭素回収技術では、CO2を放出するために120度以上の熱が必要だが、COF-999ではその半分の温度で済む。このエネルギー効率の高さは、CO2排出量の削減に大きく寄与するだろう。
しかし、この粉の旅路は順風満帆ではない。大規模な導入には、粉が吹き飛ばされないようにするための設備やコストが課題となる。アリゾナ州立大学のKlaus Lackner氏は、システム全体のコストを現在の10分の1にする必要があるとし、まだ実用化には道のりがあることを指摘している。
日本の異常な秋と気候変動の影響
日本列島が経験したこの秋、まるで季節が夏から一気に冬に飛ぶような異常気象だった。気象庁によると、今年の秋(9~11月)の平均気温は、1898年の統計開始以来最高を記録。3年連続で観測史上最も暑い秋となった。特に2023年から2024年にかけては、前年の記録を0.58度も上回るという異常な上昇を見せている。この影響は、地球温暖化による気温のベース上昇に加え、偏西風のシフトが影響していると考えられる。
この異常な気温上昇は、一次産業や観光産業にも影響を及ぼす可能性が高い。農作物の品質低下や漁獲量の減少が懸念され、紅葉の見頃がずれることで観光産業も打撃を受けるかもしれない。さらに、秋が暖かくなることで熱中症のリスクも増加する恐れがある。
今後もこのような異常気象が続く場合、我々は四季の移り変わりを忘れ、二季化が進むという予測もある。まるで四季の神様が寝坊してしまったかのように、夏と冬だけが際立つ時代が来るかもしれない。
水月湖が教える気候変動の歴史
福井県の水月湖から見つかった「年縞」は、過去の気候変動の詳細な記録を提供してくれる。まるで地球の年輪のように、何万年も前の出来事を1年刻みで記録しているこの地層は、年代測定の世界標準となっている。このデータによれば、人類はその誕生から20万年もの間、気候激変の時代を生き延びてきた。
この記録から学べることは、現代の温暖化が過去の気候変動と比較しても特異であるということだ。過去の激しい気候変動を乗り越えてきた人類だが、現代の温暖化は人為的な要因が大きく、かつてない規模で進行している。このことは、未来の気候変動に対する対策の必要性を強く示唆している。
こうした背景を考えれば、黄色い粉「COF-999」のような革新的な技術が、我々の未来を左右する鍵となるかもしれない。地球の歴史を見つめ直し、過去からの教訓を生かすことで、我々は持続可能な未来を築けるのだろうか。未来をつくる黄色い粉が、どのようにして地球の救世主となるのか、期待と不安が入り混じる中で、その行方を見守りたい。
[田中 誠]