地球の熱とエルニーニョ現象:気候変動の新たなフェーズを解明する時が来た!
地球の熱を解き明かす:エルニーニョ、ラニーニャ、そしてその先にあるもの
地球の気温がかつてないほど上昇している背景には、気候変動の複雑なメカニズムが絡み合っています。2023年から2024年にかけて、私たちは異常とも言える気温の動きを目の当たりにしています。エルニーニョ現象の終息後も、地球はなぜこんなにも暑いままなのでしょうか?
エルニーニョ現象が今年5月に終わったにもかかわらず、世界平均気温は高止まりしたままです。通常、エルニーニョが終わるとラニーニャが発生し、気温を押し下げるはずですが、今回の状況は異なります。気候科学者のZeke Hausfather氏は、この不可解な状況を解明しようとしています。過去の強いエルニーニョ現象を分析し、強さのピーク前後で気温がどのように変動したかを調査した結果、今回のようにエルニーニョのピーク前に気温がピークに達した例は非常に稀であることが分かりました。
エルニーニョの迷走とその影響
興味深いことに、1957年から58年のエルニーニョだけが、今回と似たような挙動を示しました。その時も強さのピークを迎えてから1年後に気温が急上昇したのです。Hausfather氏はこの発見を基に、現在の高温が短期的な自然変動に起因している可能性を指摘していますが、完全な解明には至っていません。この現象は、エルニーニョのように不確かな自然変動に加えて、人為的な気候変動が影響している可能性があると考えられます。
地球の温暖化は、エルニーニョやラニーニャのような一時的な現象の影響を受けるだけでなく、長期的なトレンドとして続いています。欧州連合の気象機関、コペルニクス気候サービス(C3S)は、2024年の世界平均気温が過去最高を更新する可能性が高いと報告しています。これは、産業革命前と比べて1.5度以上高くなることを意味し、パリ協定の目標に対して大きな挑戦を突きつけています。
気候変動の新たなフェーズ
気候変動の進行は、私たちが予測していた以上に加速しているようです。今後数年で1.5度を超える温暖化が常態化する可能性があり、これに対抗するためには、国際社会の連携が重要です。しかし、今年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領が再選を果たし、パリ協定から再び離脱する可能性があることは、気候変動対策にとって大きな障壁となるでしょう。
それでも、私たちはあきらめるわけにはいきません。国際社会や各国政府、企業、非政府組織が一丸となって、気候変動に立ち向かうための新たな戦略を模索する必要があります。COP29では、野心的で具体的な目標が必要とされています。気候変動の影響は、私たちの生活のあらゆる面に及び、特に異常気象による災害のリスクを高めています。
日本における防災の取り組み
日本では、この夏も全国的に厳しい暑さが予想されており、熱中症や豪雨被害が懸念されています。防災関連の62の学会が参加する「防災学術連携体」は、異常気象に備えるための警戒と早めの対策を呼びかけています。新たな制度運用として、「熱中症特別警戒アラート」や「線状降水帯の半日前予測」が導入されていますが、個人レベルでの対策も重要です。
日本救急医学会の横堀将司氏は、特に高齢者や持病を持つ人々など「熱中症弱者」に注意を払うことが重要であると指摘しています。熱中症は予防可能な災害であり、適切なエアコンの使用や暑さに慣れることが重要です。
気候変動という大きな課題に対し、私たちができることはまだ多くあります。科学的理解を深め、政策と実行を結びつけることで、未来の気候をより良い方向に導くことができるはずです。これまでの経験を活かし、持続可能な社会を築くために、今こそ行動を起こす時です。
[中村 翔平]