科学
2024年12月10日 06時20分

「マイクロプラスチックの脅威:天候操作から健康リスクまで」

マイクロプラスチック:見えない侵略者が天候を操る?

マイクロプラスチック――どこにでも存在するこの小さな侵略者が、ついに天気まで変える可能性があるとしたら、あなたはどう思いますか?ペンシルベニア州立大学の最新研究によれば、これら微細なプラスチック粒子は氷の結晶形成に影響を与え、雲の形成を変える可能性があるというのです。

研究によると、マイクロプラスチックが水滴に含まれると、それは通常よりも5~10度も高い温度で凍結することがわかりました。大気中の水滴は通常、マイナス38度近くまで過冷却されますが、プラスチックが氷の核として機能することで凍結温度が上昇するのです。この現象は、雲の形成に直接影響を及ぼし、地球の気候システムのバランスを崩す可能性があります。

雲はその種類や形成される高度によって、地球に対する影響が異なります。高層に形成される雲は、地球からの熱を閉じ込め、温暖化を促進する温室効果を生み出すことがあります。一方で、低層の雲は太陽光を反射し、冷却効果をもたらします。マイクロプラスチックがどのように雲の形成を変えるかによって、気候変動への影響は異なる結果をもたらすかもしれません。

マイクロプラスチックとPFASの果てしないループ

マイクロプラスチックの行き場のない旅路は、埋め立て地と下水処理場を行ったり来たりするエンドレスループを形成しています。イリノイ大学の研究チームによれば、マイクロプラスチックとPFAS(人工化合物)は下水処理場で一時的に取り除かれるものの、最終的には肥料として再利用されるバイオソリッドに含まれ、再び環境中に放出されてしまうのです。

この無限のループの中で、マイクロプラスチックは土壌や水源に浸透し、さらには食物連鎖を通じて人間の体内にまで到達する可能性があります。研究者たちは、これらの物質を完全に取り除くのが困難であることを指摘し、根本的な解決策としてプラスチック製品の使用と生産を減らす必要があると訴えています。

イルカの呼気からの警告

もしあなたが海を楽しむイルカだとしたら、深呼吸をするたびにマイクロプラスチックを吸い込んでしまう状況を想像してみてください。チャールストン大学などの研究チームは、イルカの呼気からマイクロプラスチックが検出されたことを報告しました。この発見は、海洋哺乳類に限らず、人間を含めた生物全体への潜在的な健康リスクを示唆しています。

研究は、都市部だけでなく田園地域においてもマイクロプラスチックが浮遊していることを明らかにしました。イルカと同様に、人間もまた、これらの微細粒子を吸入することで健康への影響を受ける可能性があります。特に、肺の炎症や組織の損傷、さらにはがんなどの深刻な健康問題を引き起こすリスクが懸念されます。

地球上のどこにでも潜むマイクロプラスチック。その影響は環境だけでなく、私たちの健康にも及んでいます。私たちがどのようにこの問題に立ち向かうかが、未来の地球と後世の健康を左右するのかもしれません。気候科学の分野では、まだ多くの不確実性がありますが、私たちがどのように行動するかが試されているのは言うまでもありません。

[田中 誠]

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