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2024年12月10日 14時12分

シリアの新時代:アサド政権崩壊とイスラエルの緊張がもたらす影響

シリアの転機:アサド政権の崩壊とイスラエルの動向

シリア内戦の長い歴史に新たな章が開かれた。アサド政権が崩壊し、反政府勢力が政権を掌握したことで、地域のパワーバランスが一変した。9日、アサド政権の首相が反政府勢力の指導者ジャウラニ氏と会談し、政権を「シリア救国政府」に移譲することで合意した。報道によれば、反政府勢力側のバシル氏が新政府を率いることとなり、首都ダマスカスでは大きな混乱もなく、トルコとの国境では祖国に戻ろうとする人々が長い列を作っているという。

この予想外の展開により、シリアの未来は不透明でありながらも、新たな可能性が広がっている。反政府勢力が政権軍の兵士に恩赦を与えると発表するなど、融和的な姿勢が見られる中、地域の安定に向けた道筋が期待される。

イスラエルとシリアの緊張:ゴラン高原を巡る論争

一方で、イスラエルの動きが地域の緊張を高めている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ゴラン高原を「永遠にイスラエルの一部」と宣言した。ゴラン高原は1967年の第3次中東戦争でシリアから奪い、1981年に併合した地域だが、国際社会はこの併合を認めていない。

アサド政権崩壊後、イスラエルはシリア国内の軍事施設に対して空爆を行い、化学兵器の研究施設も標的にしたという報道がある。イスラエルはシリアの武器が過激派の手に渡るのを防ぐためと説明しているが、国連はこの行動を非難し、イスラエルの行動が1974年の兵力引き離し協定に違反していると指摘している。

ネタニヤフ首相は、シリアでの反政府勢力の台頭が「中東における歴史的な日」だと評価し、シリア人に平和の手を差し伸べると強調したが、一方でゴラン高原の支配を強化する姿勢を見せた。この矛盾した立場は、地域の不安定さを浮き彫りにしている。

シリアと化学兵器:国際社会の懸念

シリアがどこにどれだけの化学兵器を保有しているかは依然として不明だが、アサド前大統領が備蓄していたと考えられており、これが新しい政府の下でどのように管理されるかが鍵となる。

イスラエルの意図:防衛か侵略か

イスラエルのギデオン・サール外相は、イスラエル軍の行動を「安全上の理由に基づく限定的かつ一時的な措置」と説明し、同盟国米国も「恒久的なものではない」と理解していると述べた。しかし、歴史的背景を考慮すると、イスラエルの軍事行動は単なる防衛策以上の意図を持つ可能性がある。

[松本 亮太]

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