経済
2024年11月24日 23時17分

日産「エルグランド」15年ぶりのフルモデルチェンジと未来戦略

日産「エルグランド」の再生と未来の展望

日産の高級ミニバン「エルグランド」が、15年ぶりのフルモデルチェンジを迎える。この動きは、競争が激化する高級ミニバン市場において日産が再び存在感を示そうとする試みだ。特に、ライバルであるトヨタの「アルファード」との競合関係は、今後の市場展開において非常に重要な要素となる。

1997年に市場に登場したエルグランドは、高級ミニバンという新たなカテゴリーを確立し、多くのファンを獲得した。しかし、その後、トヨタのアルファードが市場に登場し、エルグランドの地位は揺らいだ。第3世代となる現行モデルは2010年に発売され、長らくモデルチェンジが行われず、生産終了の噂も囁かれていた。しかし、日産は次期型の開発を進めており、2025年後半にワールドプレミアが期待されている。

次期エルグランドは、新しいプラットフォームを採用し、ボディサイズを拡大することで、さらなる存在感を追求する。エクステリアデザインは、シャープなキャラクターラインや切れ立ったリアが特徴で、フロントエンドには大胆なデザインのグリルが採用される予定だ。これにより、エルグランドはアルファード以上の視覚的インパクトを持たせることを目指す。

キャビン内のテクノロジーも大幅に進化する見込みで、フルデジタルインストルメントクラスターや大型のインフォテイメントディスプレイの導入が予定されている。さらに、ナビゲーションと連動する3D高精度マップやジェスチャー操作への対応も進む。また、最新世代の「プロパイロット2.0」が採用されることで、運転支援技術の向上も期待されている。

パワートレインの変革とBEV化の行方

次期エルグランドのパワートレインは大きな変革を迎える。V6エンジンを廃止し、1.5リットル直列4気筒「VCR」エンジンと第2世代「e-POWER」ハイブリッドシステムを組み合わせる予定だ。この可変圧縮エンジンは、日産が世界で初めて量産化したもので、燃費性能の大幅な向上が期待される。現行モデルの10km/リットルから、次期型では20km/リットルへの倍増も見込まれている。

一方で、BEV(バッテリー電気自動車)化については慎重な姿勢が見られる。世界的にEVシフトが進む中、日産もBEV展開を視野に入れているが、次期エルグランドでは内燃機関モデルが主役となる可能性が高い。これは、EV市場の成長が予想よりも緩やかであることや、インフラ整備の遅れが一因と考えられる。日産は、ジャパンモビリティショー2023でBEVの「ハイパーツアラー」コンセプトを発表し、これが次期エルグランドに関する示唆であるとの噂もあるが、当面はハイブリッドモデルが主流となりそうだ。

エルグランドと日産の未来戦略

エルグランドのモデルチェンジは、日産が高級ミニバン市場での地位を再び確立するための重要なステップである。特に、トヨタの「アルファード」との競争が激化する中で、日産はエルグランドを通じて差別化を図る必要がある。新しいデザインや技術の導入により、エルグランドは再び市場での存在感を高めることができるだろう。

また、次期エルグランドの発表は、日産が全体的なブランド戦略をどのように進化させるかを示すものでもある。自動運転技術の進化や環境対応車の開発など、技術革新を続けることで、日産は顧客の期待に応え続けることが求められる。次期エルグランドの成功は、日産が新たな時代における自動車産業のリーダーシップをどのように確立するかの試金石となるだろう。

このように、次期エルグランドの登場は、日産にとって重要な意味を持つ。市場の変化に迅速に対応し、新たな技術やデザインを取り入れることで、日産は高級ミニバン市場で再び輝きを取り戻すことができるだろう。今後の展開に注目が集まる。

[田中 誠]