「紀州のドン・ファン殺人公判」:映画のような愛と金のドラマが展開中!
「紀州のドン・ファン殺人公判」:華やかな表舞台と暗い影
和歌山県田辺市で起きた資産家・野崎幸助氏の死亡事件は、まるで映画の一幕のような展開を見せている。被告人として裁かれているのは、野崎氏の55歳年下の元妻、須藤早貴被告。彼女は、野崎氏の殺人罪と覚醒剤取締法違反で裁判にかけられているが、そこには驚くべき背景があった。
須藤が野崎氏と出会ったのは2017年12月のこと。彼女の証言によれば、初対面の場で野崎氏は現金100万円を手渡し、結婚を申し込んできたという。「冗談かと思って、毎月100万円くれるならいいよと返しました」という須藤の言葉には、彼女の冷淡な関係性の始まりが垣間見える。
この異様な夫婦関係は、まるで現代版のシンデレラストーリーだが、ガラスの靴の代わりに手渡されたのは札束だったのかもしれない。野崎氏は、須藤に月100万円の小遣いを約束し、定期的に彼女の口座に振り込みを行っていた。しかし、彼女の証言によると、結婚の条件には「田辺市に住まないこと」や「セックスはしないこと」が含まれていた。
愛情ではなく経済的契約
愛情に基づく婚姻とは程遠いこの関係。むしろ、ビジネスライクな契約に近いものであり、その背後には須藤の過去の経歴が絡んでいた。須藤は、札幌での地味な学生生活から一転、美容専門学校を経て夜の世界に足を踏み入れた。キャバクラでの勤務やデートクラブ、さらにはデリバリーヘルスでの働き口を持ち、AV出演も経験するなど、彼女の過去は多面的だ。
須藤が野崎氏と結婚する直前、彼女はAV女優としての活動を開始し、数本の作品に出演。報酬は約38万円であった。この事実は、野崎氏に対して経歴を偽っていたことを示唆しており、彼女の立場をさらに複雑にしている。
彼女の人生はまるでジェットコースターのようだ。贅沢なライフスタイルを追い求める一方で、経済的には常に逼迫していた。野崎氏との結婚は、彼女にとって一筋の光に思えたかもしれないが、やがてその光は影を落とすことになる。
崩れゆく仮面
野崎氏が須藤との離婚を考え始めたのも無理はない。結婚生活はほとんど別居状態であり、彼女が田辺市に滞在するのは、せいぜい月に数日程度だった。須藤は、野崎氏が愛人関係にある別の女性、X子さんに自分の性的な欲求を満たしてもらっていることを知り、それを黙認。彼女にとって野崎氏との関係はあくまで「契約」であり、愛情の欠片もなかった。
事件の鍵となるのは、野崎氏が須藤に「覚醒剤を買ってきてほしい」と頼んだという彼女の証言である。これが事実であれば、野崎氏自身がその死の要因を求めていたことになるが、真実は未だ闇の中である。
一方で、須藤が過去に「(野崎氏が)自然死したら遺産を得る」と話していたことや、彼女のAV出演歴が発覚したことが、彼女を窮地に追い込んだ可能性も否定できない。野崎氏が新たな女性に関心を寄せ始めたことで、須藤の立場は不安定となり、彼女の計画は崩れ去ったのかもしれない。
真実の行方
この事件が投げかける疑問は多岐にわたる。金銭と愛情の関係、個人の過去と現在の選択がどのように未来を左右するのか。そして、何よりも真実とは何かという問いに、我々は目を背けることはできない。裁判は続き、須藤の運命は法廷にゆだねられているが、その背後に潜む人間模様は、実に興味深いものである。
[伊藤 彩花]