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2024年12月12日 08時00分

シリア情勢大変革!アサド政権崩壊後の中東はどうなる?

シリアの新たな混迷:アサド政権崩壊後の中東情勢

長きにわたるアサド政権がついに崩壊し、シリア情勢は新たな局面を迎えています。父子二代50年以上にわたる独裁体制が、わずか10日余りで反体制派の進攻により崩壊した事実は、まるで砂の城が崩れるかのような衝撃をもたらしました。しかし、その後の展望は晴れやかではなく、むしろ新たな混迷が広がる可能性が高いのです。

長期内戦の果てに

2011年に始まったシリア内戦は、アサド政権、過激派組織「イスラム国」、そしてクルド系民兵組織が入り乱れる複雑な構図を呈していました。この内戦の泥沼からアサド政権は一時、ロシアの軍事支援を受けて息を吹き返し、政権側が優勢であるとの見方が強まりました。しかし、反体制派はその背後で軍備を増強し、機会を窺い続けていたのです。彼らの士気は高まり、一方でアサド軍の士気は低下。反体制派の進攻により、各地の要衝は次々と陥落しました。

この過程で、アサド大統領自らが驚きを隠せなかったというのは何とも皮肉な話です。13年以上も続いた内戦の末に、力ずくで維持してきた権力が音を立てて崩れ去る様は、歴史の授業で学ぶ帝国の没落を彷彿とさせます。

ロシアとイラン、戦略の再考が迫られる

シリアはロシアにとって中東の戦略的拠点であり、イランにとってはイスラエルへの防波堤として重要な位置を占めていました。両国は長らくアサド政権を支えてきましたが、ロシアはウクライナ問題に集中せざるを得ず、イランはイスラエルの攻撃で手を焼いています。アサド政権の崩壊は、両国にとって大きな打撃であり、中東における戦略の見直しが避けられない状況です。

まるで綱渡りの途中でバランスを崩したように、ロシアとイランは新たな戦略を模索しなければならないでしょう。特に、シーア派の影響力を強める「シーア派の弧」の維持は、イランにとって喫緊の課題となります。

新しい統治者への不安

アサド政権を倒した反体制派「シャーム解放機構」(HTS)は、アルカイダの流れをくむ組織で、その前身はヌスラ戦線です。彼らは穏健路線への転換を主張し、国際社会からの承認を得ようとしていますが、その統治能力には大きな疑問が残ります。特に、トルコの元駐シリア大使オメル・オンホン氏が指摘するように、タリバンのような統治手法になるのではとの懸念もささやかれています。

反体制派のジャウラニ指導者は、前政権の化学兵器の安全確保に向けた国際協力を進めていますが、これもまた信頼を得るための一策に過ぎません。彼らが掲げる「宗派主義の浄化」のスローガンが、果たしてどれだけの国民を引き付けるかは未知数です。

イスラエルの軍事行動とその影響

アサド政権崩壊後、イスラエルはシリアで250以上の軍事目標を攻撃し、非武装緩衝地帯に入るなど、50年ぶりの行動を起こしています。これにより、シリア北部はまるで火の海と化し、夜空には炎が舞い上がりました。イスラエルは、シリアにおける兵器排除の名目で攻撃を行っていますが、その背景にはシリア情勢がイスラエルの安全保障に直接影響を及ぼすという判断があるようです。

このような状況で、イスラエルがシリアの内政に干渉しないと強調しても、地域の不安定化を招く要素は多々あります。ゴラン高原に展開するイスラエル軍の動向は、今後の中東情勢に大きな影響を及ぼすでしょう。

シリアの未来は依然として不透明で、アサド政権崩壊後の新たな支配者たちがどのような形で国家を再建するのか、そして中東全体の地政学的バランスがどのように変わるのか、目が離せない状況が続きます。果たして、この新たな局面がシリアの人々にもたらすのは、希望の光か、さらなる混迷か。時間がそれを教えてくれることでしょう。

[山本 菜々子]

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