「デッドリー・デュオ」:PFASとマイクロプラスチックの脅威を再評価
環境の悪役たち:PFASとマイクロプラスチックの恐怖のタッグ
「悪役」といえば、映画の中での話かと思いきや、我々が日常で対峙している化学物質にも当てはまります。その代表的な例が、マイクロプラスチックとPFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)です。これらは、生活のあらゆるところに存在し、環境や健康に対する影響が懸念されています。それらが合体すると、まるで化学界の「デッドリー・デュオ」と化し、さらなる脅威をもたらすことが最近の研究で分かりました。
バーミンガム大学の研究チームが発表した学術論文によると、マイクロプラスチック(PET)とPFAS(PFOSとPFOA)が一緒になると、単体での影響を超える相乗的な毒性が発揮されることが判明しました。研究では、化学物質に敏感なミジンコを用いて、これらの物質がどのように生物に影響を与えるかを調べました。そして、過去に化学物質にさらされた経験のあるミジンコが、特に発育不全や繁殖力の低下を示すことが明らかになったのです。
この研究は我々に警鐘を鳴らしています。水生生物だけでなく、私たち人間もこれらの混合化学物質の影響を受ける可能性があるのです。PFASは、がんや腎臓疾患、免疫障害など深刻な健康問題と関連があることが指摘されています。マイクロプラスチックも、発育障害やホルモンの乱れを引き起こす可能性があるとされています。
無限ループ:マイクロプラスチックとPFASの旅路
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究によれば、マイクロプラスチックとPFASは下水処理場と埋め立て地を行ったり来たりする「無限ループ」に陥っています。下水処理場で除去されるマイクロプラスチックの99%は、そのまま環境中に放出されるのではなく、有機肥料としてバイオソリッドに形を変えて再利用されます。しかしこの再利用が、逆に新たな汚染を生む可能性があるのです。
問題の核心は、このバイオソリッドの70%が農地に撒かれることにあります。肥料として環境中に放出されたマイクロプラスチックとPFASは、土壌や地下水を汚染し、最終的には食物連鎖を通じて人間に戻ってくるかもしれません。残りの30%は、再び埋め立て地に戻されるため、ループが完成するのです。
この「ループ」を断ち切るためには、根本的な変革が必要です。研究者たちは、プラスチックとPFASを使用している製品の生産を停止し、環境への負荷を減らすよう呼びかけています。まさに、開きっぱなしの蛇口を閉める時が来たのです。
水道水の安全性:PFASの全国調査結果
これらの化学物質の影響は、水道水にも及んでいます。環境省と国土交通省が行った全国大規模調査によれば、全国の水道事業の約2割でPFASが検出されましたが、国の暫定目標値を超える事例はありませんでした。これにより、生活用水としての水道水の安全性が一応確認されましたが、安心はできません。暫定目標値に近い数値が検出された地域もあり、この問題に対する細心の注意が必要です。
科学界の「デッドリー・デュオ」であるPFASとマイクロプラスチックは、環境や人々の健康に長期的な影響を及ぼす可能性があります。化学物質の使用や廃棄に対する規制の強化、そして持続可能な代替品の開発が急務です。未来の世代が安心して暮らせる環境を築くために、今こそ私たちが行動を起こす時です。
[中村 翔平]