IT
2024年11月24日 21時16分

NVIDIAとソフトバンクのAI-RAN協力:AI推論の未来を切り開く

NVIDIAとAI推論の進化:NotebookLMとAI-RANが示す未来の可能性

AI技術の急速な進展が続く中、NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏は、AI推論の可能性を最大限に引き出すための戦略を積極的に構築しています。11月19日に発表された最新の四半期報告では、NVIDIAが310億ドル相当のシステムを販売したことを明らかにし、その中でGoogleの「NotebookLM」に対する強い関心を示しました。このツールは、文書の要約やチャット形式での対話、音声会話の作成をサポートするAIソリューションであり、フアン氏が推論技術の未来にかける期待を象徴しています。

NVIDIAは長年、AI用チップの開発に注力し、AI推論を行うためのインフラを提供する立場を確立してきました。この背景には、AIが企業活動のあらゆる領域で推論を行い、効率を向上させる未来が見据えられています。フアン氏は、AIの成功の鍵は、企業がマーケティングやサプライチェーン、法務、エンジニアリングといった部門で推論を活用することにあると語ります。

ソフトバンクとNVIDIAの協力:AI-RANの革新

フアン氏のビジョンは、ソフトバンクとの協力によってさらに具現化されています。ソフトバンクは、日本全国の基地局にGPUを搭載し、無線アクセスシステム(RAN)とAI処理を統合する「AI-RAN」を開発中です。この技術は、日中のトラフィックが多い時間帯はRANの処理を優先し、夜間にはAI処理を行うことで、設備投資の効率を最大化することを目指しています。

ソフトバンクのネットワークにAI-RANを導入することで、企業は最も近い場所でNVIDIAのGPUを利用してAI処理ができるようになります。フアン氏がソフトバンクに持ちかけたこのアイデアは、NVIDIAのCUDAプラットフォームとAerialライブラリを活用し、AIサービスの提供を可能にするものです。ソフトバンクの孫正義氏と宮川社長は、この技術のビジネスチャンスを見出し、AIが処理できる基地局の構築に向けた意欲を示しています。

この技術は、ソフトバンクだけでなく、世界中のキャリアが導入を検討する可能性があります。実際、AI-RANアライアンスにはT-MobileやSKテレコムといった国際的な通信キャリアが参加しています。ソフトバンクは、AI-RANの成功を国内で実証し、2026年以降には海外展開も視野に入れています。

AMDの挑戦:AI市場での巻き返しを目指す

一方で、GPU業界の2番手であるAMDも、AI用GPU市場での巻き返しに向けた動きを強化しています。今年、AMDは約4%の人員削減を行い、AI領域へのリソース集中を図っています。NVIDIAに対抗するため、AMDはR&D予算を4倍に増やし、プログラマブルロジックデバイス開発会社のXilinx、オープンソースAIソフトウェア開発会社のNod.ai、データセンターのサーバー&インフラ開発製造会社のZT Systemsを買収しました。

AMDは、METAやMicrosoftといった大手企業とのパートナーシップを強化しつつ、AI市場でのシェア拡大を目指しています。NVIDIAがAI用チップのシェア80%を占める中、AMDは新たな技術革新を通じて、AI用チップ市場での存在感を高めようとしています。

AI用チップ市場は巨大であり、競争は激化しています。NVIDIA、AMDの他にも、新興勢力のTenstorrentなどが台頭し、今後も多様なプレイヤーが市場に参入する可能性があります。AI推論技術の進化と普及が進む中、NVIDIAとソフトバンクのような企業連携がどのように市場を形作っていくのか、そしてAMDがどのように巻き返しを図るのか、注目が集まります。

未来を見据えた技術革新

AI推論技術は、企業の業務プロセスを革新する可能性を秘めています。NVIDIAとソフトバンクの協力により、AIが無線ネットワークの効率を劇的に向上させる一方で、AMDは新たな技術開発を通じて競争力を高めようとしています。AI市場での競争が激化する中で、各企業がどのように技術を進化させ、ビジネスチャンスを掴むのか、今後の展開から目が離せません。

[鈴木 美咲]