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2024年12月15日 16時11分

シリア政権崩壊で中東情勢激変!ヒズボラはどう動く?

シリア政権崩壊の余波とヒズボラの苦境:中東情勢の新たな局面

シリアで数十年にわたって続いたアサド政権が、わずか12日間で崩壊した。この急展開は、シリア国内外でさまざまな波紋を広げている。反体制派の勢力が首都ダマスカスを制圧し、政権の背後にあったイランとロシアの軍事拠点も揺らいでいる状況だ。中東の地政学的なパズルは、今や新たな形を模索している。

ヒズボラ、補給路途絶の危機

イスラム教シーア派武装組織ヒズボラにとって、シリアのアサド政権崩壊は深刻な問題を引き起こした。ヒズボラはイランからの武器や物資の供給を、シリアを経由するルートに依存していた。しかし、シリアの反政府勢力がイラクとの国境を制圧したことで、この重要な補給路が途絶した。ヒズボラの最高指導者カセム師は、テレビ演説で「些細なことにすぎない」と強がったが、その裏にある危機感は隠せない。

ヒズボラは2013年からシリア内戦に介入し、アサド政権を支援してきた。しかし、今やその戦略は見直しを迫られている。シリアの新たな政権がどのような立場を取るのか、そしてレバノンとの関係がどのように展開するのかは、ヒズボラの今後を左右する重要な要素となるだろう。

新生シリアと国際社会の挑戦

シリアでは暫定政府が発足し、国家再生に向けた政治プロセスが始動した。暫定政府の首相には、旧反体制派である「シリア救国政府」のムハンマド・バシル氏が指名された。彼の背後にいるのは、イスラム過激派からの脱却を目指す「シリア解放機構」(HTS)のジャウラニ氏である。彼は公共サービスの提供や地域再建を進め、新しいシリアの姿を描こうとしている。しかし、彼の過去のイメージが国際社会での信頼を損ねており、特に米国がHTSをテロ組織から除外するかどうかは不透明だ。

アサド政権崩壊により、シリアは再び国際政治の焦点となった。ロシアとイランは軍事的な影響力を失いつつあり、新たな政治的均衡が模索されている。米欧やアラブ諸国がどのようにシリア復興に関与するかが、今後の鍵となる。

化学兵器問題と人道的課題

アサド政権の崩壊は、シリアに隠匿されていたと疑われる化学兵器を廃絶する好機でもある。過去、政権は化学兵器禁止条約に加盟し、千トン以上の化学兵器を廃棄したとされるが、その後も使用疑惑が絶えなかった。現存する化学兵器がどれほどの脅威を持つかは不明だが、盗まれた場合のリスクは依然として残る。

同時に、国内の人権問題も浮き彫りになった。アサド政権下の「絶滅刑務所」と呼ばれる施設では、3万人以上が命を落としたとされる。政権崩壊により囚人の一部は解放されたが、長年の恐怖政治が残した傷跡は深い。

シリア人の帰還と未来への希望

政権崩壊を受け、多くのシリア人が帰国を始めている。彼らの多くは、これまで国外で恐怖から逃れて生活していた。日本に住むシリア人たちも、故郷の再建を願っている。彼らの中には、「未来は安全になって欲しい」と語る者も少なくない。

[伊藤 彩花]

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