サントリー新時代!鳥井信宏氏が次期CEOに就任、そのやんちゃな経営戦略とは?
サントリー新時代の幕開け:鳥井信宏氏が次期社長に就任
国内酒類大手のサントリーホールディングスで、10年ぶりに社長交代が発表されました。創業家出身の「プリンス」、鳥井信宏氏が2025年3月25日付で社長に昇格します。現社長の新浪剛史氏は代表権を持ったまま会長に就任し、佐治信忠会長との二人会長体制が敷かれます。鳥井氏と新浪氏は、管掌分野を設けずに「二人三脚」で海外・国内事業を担う計画です。
鳥井氏は「いろいろと考えて縮こまるのではなく、思い切ってやんちゃに進めていく。自分が最も楽しんで働きたい」と意気込みを述べました。この積極的な姿勢は、彼のこれまでの成功と失敗の経験から培われたものでしょう。
鳥井氏は1966年生まれで、創業者のひ孫にあたります。彼は日本興業銀行(現みずほ銀行)でキャリアをスタートさせ、1997年にサントリーに入社しました。最初の10年は酒類の営業を担当し、現場で泥臭くも顧客の信頼を得ながら売り上げを積み上げることを学んだのです。その後、営業統括本部部長やM&Aを担う戦略開発本部長など、多様なポジションを経験し、着実に実績を積み上げてきました。
新浪時代の遺産と課題
新浪氏がサントリーHDの社長に就任したのは2014年10月。創業家以外の人物が社長になるのは初めてのことで、彼は海外事業の拡大という大きなプロジェクトを託されました。アメリカの蒸留酒大手ビーム社を1.6兆円で買収し、ウイスキー「ジムビーム」や「メーカーズマーク」などの強力なブランドを獲得しました。この買収は、サントリーの海外事業を大きく飛躍させる転機となりました。
しかし、国内事業の成長は未だ課題として残されています。サントリーはウイスキーなどの蒸留酒で国内シェア首位、世界でも5位の強さを見せていますが、酒類全体では国内3位にとどまっています。国内市場でのシェア拡大は、鳥井氏の新社長としての試金石となるでしょう。
特にビール事業は、サントリーとして格別の思い入れのある分野です。国内ビール事業が初めて黒字になったのは、参入から約45年経った2008年。プレモルのヒットが大きく貢献しましたが、現在のサントリーは、ビールと発泡酒の「ビール類」で国内シェア3位に甘んじています。
スタンダードビールでの勝負
サントリーが目下拡販を急ぐのは、昨年4月に発売したスタンダードビール「サントリー生ビール」です。2024年には600万ケース、早期の1000万ケース達成を目指していますが、今年1~6月の販売実績は250万ケースにとどまっています。強力な競合の中で苦戦を強いられていますが、国内酒類トップを目指すならばそろそろ勝ち筋を見つける必要があります。
鳥井氏の経営手腕が試されるのは、このビール事業です。過去には「スタンダードビールの売り方がわからない」と胸の内を語ったこともありますが、今や「やんちゃに進めていく」という意気込みと共に、新たなブランドの確立を目指しています。
経営者交代への評価と新浪氏の試練
今回の社長交代は、SNSで創業者一族の社長就任を称賛する声が目立っています。一方、創業家以外で初めて同社のトップとなった新浪氏には、批判的なコメントが多く寄せられています。彼の発言や行動がよく批判されることもあり、「サントリーにとどまるなら不買運動を続ける」といったネガティブなコメントも相次いでいます。
新浪氏はプロ経営者としてのキャリアを積んできましたが、日本においてはプロ経営者に対する抵抗感が根強く、企業の伝統や文化を破壊するというイメージを抱かれがちです。しかし、彼が築いた海外事業の成功は、サントリーの成長にとって重要な遺産となっています。
[伊藤 彩花]