国際
2024年12月17日 07時12分

ロシアと北朝鮮、列車運行再開で関係強化へ

ロシアと北朝鮮、列車運行再開で交流拡大を狙う

ロシアと北朝鮮が約5年ぶりに旅客列車の定期運行を再開した。この動きは、新型コロナウイルスの影響で2020年に停止された路線の復活を意味しており、両国間の交流を深める狙いがある。列車はロシア極東のハサンと北朝鮮の豆満江を結び、週3回運行される。この再開は、ロシアと北朝鮮が軍事分野での協力を深め、「包括的戦略パートナーシップ条約」を発効させた背景にある。

この列車の再開は、表向きは極東地域の物流の復興を目指すものとされているが、実際にはロシアと北朝鮮の新たな軍事協力の一環としての側面も否定できない。両国はウクライナ戦争の中で、軍事支援や兵力の派遣を通じて、互いに依存度を高めている。

北朝鮮国内の経済危機と物価高騰

一方、北朝鮮国内では、物価の急騰と経済混乱が深刻化している。ガソリンが年初比で2.15倍、白米が1.65倍に値上がりし、住民たちは生計を立てるのが難しい状況に陥っている。北朝鮮政府は、この物価高騰を商人の買い占めや売り惜しみのせいにし、強硬策で臨んでいるが、実質的な経済対策は見当たらない。

物価高騰の背景には、北朝鮮の経済政策の失敗と、コロナ禍による国際的な孤立がある。金正恩政権は個人の経済活動に対する規制を強化しており、住民たちは現金収入の当てが乏しくなっている。このため、北朝鮮の都市住民の中には日雇い労働で生計を立てる者も多く、生活はますます厳しくなっている。

トランプ氏の新たな北朝鮮政策

そんな中、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は、リチャード・グレネル氏を大統領特使に指名し、北朝鮮問題を担当させる意向を示した。グレネル氏は、トランプ政権の1期目で駐ドイツ大使を務めた経験を持ち、北朝鮮との対話の可能性を支持している。トランプ氏は、金正恩との関係を重視し、対話を通じて北朝鮮問題に取り組む姿勢を強調している。

トランプ氏の北朝鮮政策は、対話と外交を軸にしたものであり、過去の首脳会談を肯定的に評価している。彼は、敵対国とも直接対話を行うことが問題解決の鍵であると考えており、グレネル氏の起用はその戦略の一環と見られている。トランプ氏は、北朝鮮の軍事的脅威を抑えつつ、経済的な緩和策を模索することで、北朝鮮を国際社会に引き戻す狙いがある。

ロシア・北朝鮮関係と国際社会の複雑な構図

ロシアと北朝鮮の関係強化は、国際社会における複雑なパワーゲームの一部として位置づけられる。ロシアはウクライナ戦争での孤立を避けるため、北朝鮮との連携を強化しており、北朝鮮はその見返りとして軍事支援を提供している。この関係は、国際的な制裁や圧力を回避するための戦略としても機能している。

また、トランプ氏の対話重視のアプローチは、北朝鮮の孤立を打破する可能性があるものの、国際社会の反応は賛否両論である。トランプ氏の戦略が功を奏すれば、北朝鮮は再び国際社会の一員としての地位を築く可能性があるが、それが実現するには多くの障壁が存在する。北朝鮮が経済的に立ち直るためには、制裁の緩和や新たな経済協力が不可欠であるが、それには国際的な信頼回復が前提となる。

[中村 翔平]

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