経済
2024年12月17日 08時12分

中村史郎氏、CDNライフタイム・アチーブメント・アワード受賞でカーデザイン界に新風

デザインの巨匠、中村史郎氏の歩みとカーデザインの未来

世界中の自動車ファンやデザイナーが集まる中、元日産の中村史郎氏が『CDNライフタイム・アチーブメント・アワード』を受賞した。これはカーデザイン界のアカデミー賞とも言える栄誉であり、日本人として初めての受賞者となったことから、その意義は一層深い。中村氏はこの受賞を、デザイナー生活50周年という節目の年に迎えた。彼のキャリアを振り返りつつ、カーデザインの未来を見据えることは、今後の自動車業界にとっても重要な視点となるだろう。

いすゞ時代の挑戦と革新

ベルギーでの経験は、中村氏にデザインマネジメントの重要性を認識させた。彼は「優秀なスタッフを得て、もう自分でスケッチを描かなくてよい、彼らの能力を引き出すことに集中しようと考えた」と語る。これは、デザインというクリエイティブな分野においても、チームワークとマネジメントがいかに重要であるかを示す好例である。

日産での革命とブランド再構築

1999年、中村氏は日産に電撃移籍し、デザイン本部長/チーフクリエイティブオフィサーとして、同社のデザイン部門を率いることとなった。当時の日産は、エンジニアがデザイン本部長を務めるという異常事態に陥っており、改革が急務だった。カルロス・ゴーン社長の下で、彼は新たなデザイン哲学をもとに、日産のブランドイメージを刷新することを目指した。

その結果として生まれたのが、2代目キューブや初代キャシュカイ、ジュークといった大胆なデザインの車種である。これらの車両は、単に売れるだけでなく、日産のブランド力を新たな次元へと引き上げることに成功した。特にキューブは、四角いフォルムと左右非対称のウインドウという革新的なデザインが若者の心をつかみ、デザインの力を証明することとなった。

また、中村氏は日産ロゴや店舗デザインの刷新にも力を入れ、デザインを単なる製品の外観にとどまらず、ブランド全体の統一感を生み出すツールとして活用した。これは、デザインが企業の価値を高める重要な要素であることを示すものであり、多くの企業が学ぶべき成功例だ。

過去と現在が交錯するモーターショー

1989年の東京モーターショーでは、いすゞの4200Rやスバルのレガシィツーリングワゴンが初登場し、当時の自動車業界に新たな風を吹き込んだ。4200Rは、いすゞがトラックとバスの専門メーカーに転身する前の、乗用車時代の華々しい展示であった。一方、スバルのレガシィは、セダンが主流だった同社のラインナップにおいて、新たな可能性を示したモデルである。

また、パリ・モーターショー2024では、ルノーやプジョー、アルファ・ロメオといったメーカーが新型車を発表する予定であり、自動車業界のトレンドは、電動化と持続可能性に向けて大きくシフトしている。特にアルピーヌの水素スーパーカーやルノー4の復刻版など、伝統と革新が交錯する展示が予定されている。

このように過去の名車やデザインが再評価される一方で、未来のモビリティに向けた新たな挑戦が進行している。中村氏のようなデザイナーの功績は、単に過去の栄光として語られるだけでなく、次世代のデザインの指針となるだろう。

カーデザインは、単なる美しさを追求するだけでなく、社会の変化や技術の進化を反映する重要な役割を担っている。中村史郎氏の50年にわたる歩みと、彼の受賞が示すように、デザインは車両の魂であり、業界の未来を形作る力を持っているのだ。

[佐藤 健一]

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