トランプ再登板の影響と日本経済の行方—産業別の懸念と期待
トランプ再登板がもたらす波紋と期待
産業別の影響:農業から製造業まで
トランプ氏の政策は、各産業に異なる影響を与えると予想される。特に、農業、林業、漁業、鉱業では43.5%が「マイナス」と回答しており、新政権の政策がこれらの産業に与える影響は大きい。製造業も34.5%が「マイナス」と回答しており、特に非鉄金属製造業では58.0%が「マイナス」との回答を示している。
一方で、金融・保険業や運輸業、小売業では比較的「プラス」と考える企業が多い。金融商品取引業、商品先物取引業では29.4%が「プラス」と回答しており、トランプ政権の新たな通貨政策や金融政策がこの業界に有利に働く可能性を示唆している。
さらに、トランプ氏はエネルギー政策においても大きな転換を図る予定で、原油の増産や環境規制の緩和を打ち出している。これによりエネルギー価格が下がることが期待される一方で、EVシフトを進める製造業などには軌道修正が求められる可能性もある。
アルミニウム対日プレミアムの上昇とその背景
トランプ政権の影響はアルミニウム市場にも及んでいる。2025年1―3月期のアルミニウム新地金対日プレミアム交渉では、前四半期より約30%高の一部トン228ドルで決着した。この背景には、中国がアルミに対する輸出税の還付を停止したことや、トランプ次期大統領による関税引き上げ観測がある。こうした不透明要因がプレミアムを押し上げている。
欧米のプレミアムも上昇基調にあり、当初は年明け以降に交渉を持ち越すことも想定されていた需要家側も、早期決着に傾いた。これは、トランプ政権の政策が市場に与える影響を最小限に抑えようとする企業の姿勢を反映している。
日本経済の未来とトランプ影響
トランプ政権の影響は日本経済にどのように波及するのか。宮川努・学習院大学経済学部教授は、日本経済がこれから直面する課題について、過去の教訓を踏まえて述べている。高度成長期の日本は、民間投資が非常に活発であり、政府のターゲティングポリシーが特定産業の育成を支援したことが成長の原動力となった。
しかし、現在の日本は長期停滞が続いており、デフレからの脱却が課題となっている。宮川教授は、政府が「デフレ脱却」と言い続けている現状に対して疑問を呈し、物価上昇や景気後退をもたらすスタグフレーションのリスクを指摘している。この状況は、トランプ政権の影響を受けてさらに複雑化する可能性がある。
アメリカの政治的変動が日本経済に与える影響は計り知れないが、一つ確かなことは、経済は予測不能な波に揺さぶられる船のようなものであるということだ。日本企業は今後、トランプ政策の荒波をどう乗り越えていくのか、その手腕が試されることになるだろう。
[佐藤 健一]