経済
2024年12月17日 18時10分

アリババ、銀泰売却と日本市場での新たな挑戦「TAO」発表

アリババの大胆な再編:百貨店部門売却と日本市場への新たな挑戦

中国の電子商取引(EC)大手アリババ・グループが、百貨店部門「銀泰(インタイム)」の売却を発表した。この決定は、同社が13億ドルの損失を計上するという痛みを伴うものであるが、同時にその意図は明確だ。アリババは、主力のEC事業に経営資源を集中させるため、非中核資産の整理を推進している。今回の売却は、衣料品メーカーの雅戈爾集団(ヤンガー)と銀泰の経営陣で構成される企業連合へのもので、約10億2000万ドルの取引となる。

アリババは2017年に銀泰を26億ドルで買収し、オンラインとオフラインの小売事業の統合を図ろうとしていた。しかし、急速に進化するEC市場の中で、字節跳動(バイトダンス)やPDDホールディングスといった新興勢力が台頭し、アリババはその市場シェアを維持することが難しくなっている。こうした背景から、アリババは中核事業の強化と成長が見込まれる分野への投資を優先する方針に転換し、銀泰の売却を決断した。

日本市場への新たな一手「TAO」の登場

一方、アリババは日本市場へのアプローチを強化するべく、新たな越境ECアプリ「TAO(タオ)」をリリースした。このアプリは、日本市場に特化したライフスタイルECプラットフォームとして設計されており、高品質な商品を適正価格で提供することを目指している。TAOは、アリババの国際EC事業部門「Alibaba International Digital Commerce Group」によって運営され、今後日本のEC市場での存在感を高めることを狙っている。

TAOのリリースは、日本法人「淘宝日本(タオバオニホン)」の設立とともに進められ、日本語対応のカスタマーサポートを充実させるなど、日本ユーザー向けのサービス強化に注力している。TAOは、約300万点の商品を厳選して提供し、AI技術を駆使したパーソナライズ機能やバーチャル試着機能など、先進的なテクノロジーを導入している。

日本市場は、オフライン小売が成熟しているため、新しいECプラットフォームが簡単に成功する市場ではないが、アリババは日本市場が持つ成長の余地に賭けている。TAOの市場運営責任者である劉慧娟氏は、日本のEC市場にはまだまだ成長の余地があり、越境商品の需要が高まっていると述べている。

市場の競争とアリババの挑戦

アリババの大胆な戦略は、競争激化する市場環境の中での生き残りをかけた賭けとも言える。日本市場では、すでにAmazonや楽天といった強力なプレーヤーが存在し、また中国発のSHEINやTemuといった低価格路線の越境ECも台頭している。TAOはこれらと一線を画し、独自性のある良質な商品を手頃な価格で提供することを重視している。

[山本 菜々子]

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