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2024年12月17日 19時41分

韓国の「非常戒厳」:尹錫悦大統領と軍高官の逮捕劇が示す政治的嵐の予兆

韓国の「非常戒厳」:逮捕が続く軍上層部、その背後に迫る政治的嵐

韓国の政治と軍事の舞台で、まるで映画のような展開が繰り広げられている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領による「非常戒厳」宣言を受けて、韓国の検察は次々と軍の高官を逮捕している。これには陸軍参謀総長の朴安洙(パク・アンス)氏も含まれ、彼を含む5人の主要な軍関係者が拘束された。だが、この一連の逮捕劇は単なる軍事事件にとどまらず、韓国の政治的地震を予感させる。

戒厳司令官の逮捕:軍の上層部に何が起きたのか

朴安洙氏は、尹大統領の非常戒厳宣言により戒厳司令官に任命され、その名義で「一切の政治活動を禁じる」とする布告令を発表した。しかし、彼の証言によれば、彼自身は布告の文面を受け取った後にしか詳細を知らなかったという。このような状況下で、彼がどの程度の主導権を持っていたのかは疑問が残る。

また、逮捕された他の高官には、対北朝鮮作戦や朝鮮半島有事で中心的な役割を担う陸軍特殊戦司令官、国軍防諜司令官、首都防衛司令官が含まれている。これはまるで、韓国の安全保障機構の心臓部が一時的に停止したかのようだ。かつての冷戦時代を彷彿とさせるこの状況は、韓国の安全保障体制に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

尹大統領の暗雲:政治的な逆風に直面か

尹大統領は、非常戒厳を宣言し、戒厳司令部を稼働させるという異例の行動を取った。その後、国会では彼に対する弾劾訴追案が可決され、職務停止中の状態にある。尹氏の弁護士は「法廷で堂々と所信に基づき立場を表明する」としているが、憲法裁判所での弾劾審判が始まる中で、彼の政治生命は風前の灯のように揺らいでいる。

尹氏に対する内乱罪の適用は、暴動の要素がなかったという弁護側の主張により、法的に成立するかどうかは不透明だ。しかし、彼が軍と警察を通じて国会を封鎖するよう指示したとされる事実が重くのしかかる。韓国の歴史において、戒厳令の発動は常に国の政治的転換点を示してきた。朴正煕(パク・チョンヒ)や全斗煥(チョン・ドファン)の時代を思い起こさせるこの事態に、韓国国民は冷静でいられるだろうか。

韓国における戒厳令の歴史的文脈と今回の事件

韓国では、過去に何度も戒厳令が発令されてきたが、それらは常に政治的激動期に起きている。1960年代から1980年代にかけて、戒厳令はしばしば軍事独裁政権によって政治的反対勢力を抑え込むために利用された。これにより、民主化運動が激化し、最終的には1987年の民主化宣言へと繋がった。

今回の非常戒厳は、歴史的な背景を考慮すると、韓国の民主主義に対する試練の一つと見なされるかもしれない。尹大統領の行動が何を意味するのか、韓国の政治シーンは再び岐路に立たされている。国民は、戒厳令の影響がどのように広がるのか、そしてそれが彼らの日常生活にどのように影響するのかを注視している。

[田中 誠]

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