ソフトバンク、4.9GHz帯獲得で5G時代を加速
ソフトバンクが4.9GHz帯を獲得:新たな時代への布石とその挑戦
ソフトバンクが、総務省から5G用の4.9GHz帯を割り当てられたことは、通信業界にとって大きなニュースだ。4.9GHz帯は、次世代通信を見据えた重要な周波数帯であり、今後の技術革新に大きく貢献する可能性を秘めている。しかし、この割当には数多くの課題が伴う。
宮川潤一社長は、4.9GHz帯の獲得について「是非欲しいと何年も前から希望していた」と語った。この周波数帯は、ソフトバンクにとって喉から手が出るほど欲しかったものであり、同社の通信インフラ戦略の中で重要な位置を占めている。特に、Sub-6帯での競争力を高めるためには、この追加の100MHz幅が欠かせない要素であるとされている。
ただし、ソフトバンクの道のりは簡単ではない。この周波数帯を本格的に活用できるのは2030年からとされており、それまでに数多くの既存事業者との交渉や移行作業が必要となる。宮川社長は、「免許局でいくと1万3000局あり、登録されている免許人で660人いる」と、移行の複雑さを認めつつも、「移行を伴う周波数はいただけるが、それ以外はなかなかいただけない。それでもやりくりする覚悟を持って有効利用していきたい」と意気込んでいる。
AI時代の到来を見据えて
ソフトバンクが4.9GHz帯を重要視する理由の一つに、AI技術の進展がある。宮川社長は、「AI関連のトラフィックがどんどん増えている」と述べ、AI-RAN構想の実現に向けた周波数の重要性を強調している。5Gネットワークの進化は、AIの活用を加速させる鍵となる。新たなAI技術が日々進化する中で、通信トラフィックの増加は避けられない。これに対応するため、ソフトバンクはAI-RANの構築を進めている。
災害対策と通信インフラの未来
一方で、ソフトバンクは災害対策にも力を入れている。宮川社長は、「通信難民」の発生を防ぐため、官民一体となった対策強化を訴えている。特に、能登半島地震での経験を踏まえ、通信インフラの重要性を再認識している。東京都主導での実践的な災害対策訓練の必要性を提案し、災害時の通信維持に向けた具体的な対策を求めている。
ソフトバンクは、4.9GHz帯の獲得を機に、技術革新と災害対策の両面で新たなステージに進もうとしている。これからの数年は、ソフトバンクにとって、既存インフラの強化と新技術の導入を両立させるための重要な時期となるだろう。
通信業界の共通課題とソフトバンクの挑戦
通信業界全体で、災害時の通信維持やAI時代に向けた準備は共通の課題である。KDDIやNTTドコモも、それぞれの技術やネットワークを活用し、災害時の対応を強化しようとしている。例えば、KDDIは米スペースXの衛星ブロードバンド「Starlink」での応急復旧を紹介し、NTTドコモは高高度プラットフォーム「HAPS」の実用化を急ぐ。
こうした各社の動きは、競争を超えて、通信インフラ全体の強化を目指すものであり、ユーザーにとっても安心感をもたらすものだ。ソフトバンクもまた、この競争の中で独自の戦略を進化させ、AI-RANの実現や災害対策においてリーダーシップを発揮しようとしている。
通信インフラの進化は、私たちの生活に直接影響を及ぼす。新たな技術と共に、災害対策やAI活用といった未来の課題にどう立ち向かうかは、通信業界全体の使命である。ソフトバンクの挑戦は、その一端を担う重要な試みであり、2030年に向けた大きな一歩となるだろう。
[伊藤 彩花]