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2024年12月20日 07時10分

中村勘三郎十三回忌、愛と伝統を伝える中村屋ファミリーのドキュメンタリー

中村勘三郎十三回忌、愛と伝統の中村屋ファミリーに迫る

中村勘三郎。この名は、ただの役者の名前ではなく、歌舞伎界における一つの象徴であり、多くの人々の心に深く刻まれた存在だ。彼の急逝から12年が経過した今でも、その影響力は色褪せることなく、中村屋ファミリーは彼の遺志を受け継ぎ、新たな舞台の歴史を刻み続けている。2024年に行われた十三回忌追善公演は、まさにその証と言えるだろう。

大竹しのぶが語る「中村屋の愛」

今回、フジテレビ系の特別ドキュメンタリー番組『勘三郎十三回忌特別企画 中村屋ファミリー 父が遺した約束…硫黄島の奇跡』でナレーションを担当したのは、女優・大竹しのぶさんだ。彼女は生前の勘三郎さんと親交が深く、今回の企画に参加できた喜びを「本当にうれしい」と語っている。大竹さんが語る中村屋ファミリーの魅力は、その底知れぬ「愛」にある。親子愛、兄弟愛、そして家族愛。これらが中村屋の舞台を彩り、観客を魅了し続けているのだ。

大竹さんは、勘三郎さんの長男・中村勘九郎と次男・中村七之助、そして彼らの息子たち、勘太郎と長三郎を「本当に素晴らしい4人組」と称賛する。彼らの成長を見守りながら、歌舞伎座で涙を流す様子を「完全に親戚のおばちゃん」と自嘲するが、それは彼女の中にある深い愛情の表れだ。

役者としての偉大さと日常の親しみ

中村勘三郎の偉大さは、舞台上での存在感だけでなく、彼が中村屋ファミリーに遺した人間的な魅力にもある。彼のエピソードは、しばしばユーモアと親しみを感じさせる。例えば、勘三郎さんが「芝居筋肉」という言葉で舞台上の動きを説明した話は、彼の人間味を感じさせるものだ。体が硬くても、必要なときに必要な動きができる。それが役者の持つ「芝居筋肉」だというのだ。このエピソードは、舞台役者としての技術だけでなく、彼の柔軟な思考と独特の視点を示している。

大竹さんが「哲明さんがいてくれたら」と何度も語るように、勘三郎さんは彼女にとっても多くの役者にとっても、理想であり、目指すべき存在だったのである。

未来への希望と伝統の継承

現在、中村勘九郎と中村七之助が中心となり、中村屋はその伝統を守り続けている。そこに新たな希望として登場したのが、勘九郎の息子、勘太郎と長三郎だ。彼らが舞台に立つ姿は、まるで勘三郎さんが再び舞い戻ってきたかのような錯覚を与える。

特に長三郎について、大竹さんは「登場した瞬間に愛される」と、その愛嬌を勘三郎さんと重ね合わせる。これは単なる親戚の感傷ではなく、中村屋一族の持つ強い絆と、次世代への期待を表している。

過去と未来をつなぐドキュメンタリー

今回のドキュメンタリー番組は、中村勘三郎という偉大な役者の足跡を追い、その遺産がどのように中村屋ファミリーによって受け継がれ、発展しているかを描く。これは単なる過去の記録ではなく、未来への希望を示すものでもある。

「今年だけじゃなくてずっとだから」と大竹さんがナレーション原稿を修正したように、勘三郎さんの影響はこれからも続くのだろう。彼の存在は、中村屋の舞台を通じて、今後も多くの観客に愛と感動を届け続けるに違いない。

このように、歌舞伎という伝統芸能の奥深さと、それを支える人々の情熱が織りなす物語は、見る者の心に強く響く。中村屋ファミリーの新たな歩みを見守りつつ、彼らのさらなる飛躍を期待したい。

[田中 誠]

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