経済
2024年12月20日 09時12分

サントリー新社長に鳥井信宏氏、「やってみなはれ」精神で次世代へ

サントリー、新たな時代の風を受けて

2025年3月25日、サントリーホールディングスの新たな舵を取るのは、創業者の曾孫にあたる鳥井信宏氏です。その名を聞くだけで、サントリーの「やってみなはれ」精神を思い起こさせる彼が、次期社長としてどのようにこの伝統を未来へと繋げるのか、多くの関心が寄せられています。

鳥井氏は、サントリーの創業精神である「やってみなはれ」と「利益三分主義」を継承しつつ、新たな価値を生み出すことを目指しています。特に彼が強調するのは「陰徳」という概念です。これは、目に見えない善行を積むことで、やがて良い報いが訪れるという信条。創業者・鳥井信治郎氏が説いたこの教えは、企業の倫理観にも深く根付いています。鳥井氏の手腕が問われるのは、この古き良き価値観をいかに現代のビジネスに応用し、新たな時代に適応させるかという点でしょう。

創業家の重みと現代経営の融合

一方、同族経営に対する批判や不安も存在します。特に、変化の激しい現代において、硬直した経営がリスクとなる場合もあります。しかし、鳥井氏はその柔軟な思考と、聞き上手な性格で知られ、粘り強さと柔軟性を兼ね備えたリーダーとして期待されています。新浪剛史氏が「次の社長は鳥井信宏だ」と公言してきた背景には、彼の人柄と能力への信頼があるのでしょう。

現場を知るリーダーの強み

鳥井氏は、現場をよく知るリーダーとしても知られています。彼は国内の現場を頻繁に訪れ、社員と直接コミュニケーションを取ることを重視しています。彼の現場訪問は、ただの視察にとどまらず、現場の声を聞き、実際の課題を肌で感じるためのものです。このような取り組みは、企業全体の士気を高め、社員の意識改革を促す効果が期待されます。

特に、彼がビール事業に強い思い入れを持っていることは、ザ・プレミアム・モルツの戦略部長としての経験からも明らかです。彼は、ビール事業を「サントリーの魂」と評し、その品質向上に絶え間ない努力を続けてきました。これは、45年間赤字を抱えてきたビール事業を成功に導いたサントリーの「しつこさ」の象徴とも言えるでしょう。

未来への挑戦と適正飲酒の推進

若者の飲酒離れや飲酒人口の減少が進む中、鳥井氏は適正飲酒の重要性を訴えます。彼のビジョンは、お酒を嗜む文化を守りつつ、社会全体で健全な飲酒習慣を育むことです。彼は「ドリンクスマイル」という概念を提唱し、飲む人も飲まない人も、それぞれのドリンクを手に笑顔で豊かな時間を楽しむ社会の実現を目指しています。

このように、鳥井氏のリーダーシップの下で、サントリーは国内外での事業拡大に挑戦し続けるでしょう。国内酒類事業の売上を2030年までに1兆円に達成するという目標を掲げる一方で、品質を最優先に考える姿勢は、企業の持続可能な成長に不可欠です。

新しい価値を創造し、持続可能な未来を築くために、鳥井信宏氏はサントリーの伝統を大切にしつつ、現代のニーズに応える柔軟な戦略を打ち出していくことでしょう。彼の「やんちゃに楽しむ」精神が、サントリーの新たな時代を切り拓く鍵となるのです。

[伊藤 彩花]

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