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2024年12月20日 23時20分

北朝鮮ハッカーの暗号資産攻撃、DMMビットコインの閉鎖と日本市場の再編

北朝鮮の暗号資産攻撃と日本市場の未来

2024年5月、DMMビットコインから約482億円相当のビットコインが流出する事件が発生しました。この事件は、ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスによると、北朝鮮のハッカー集団による攻撃である可能性が高いとされています。過去1年間で北朝鮮関連のハッカー集団は47件の攻撃を行い、総額13億4000万ドル(約2077億円)の暗号資産を奪取しています。この数字は前年比で102.88%増加しており、2024年の暗号資産ハッキング被害総額の61%を占めています。

このようなサイバー攻撃の増加は、暗号資産取引所のセキュリティ強化を一層促しています。DMMビットコインは顧客預金を全額補償したものの、この事件を受けて2024年12月に取引所を閉鎖する決定を下しました。資産と顧客口座はSBIVトレードに移管される予定です。

日本における暗号資産市場の再編と規制強化

一方、暗号資産市場全体としては、規制強化と業界再編の動きが見られます。ビットバンクの廣末紀之社長は、日本の暗号資産業界が「2社でいい」との見方を示し、今後の業界再編の可能性についても言及しています。背景には、金融庁が「暗号資産の再定義」を検討していることがあり、資金決済法から金融商品取引法(通称、金商法)への規制フレームの移行が進む可能性があります。

このような規制の変化は、取引所にとって負担が増える一方で、セキュリティやガバナンスの強化を促進するものです。廣末氏は、JVCEAのセキュリティ委員長として、「JPCrypto-ISAC」という暗号資産版のISAC(業界に特化したサイバーセキュリティ関連の情報共有・分析を行う組織)の設立を目指すなど、業界全体でのセキュリティ強化に向けた取り組みを進めています。

暗号資産の未来とビットバンクの戦略

ビットバンクは現在、東証上場を目指し、取引所の強化や新たなサービスの導入を計画しています。廣末氏は、ビットコインETFの導入やRWA(現実資産)のトークン化を見据えた準備を進めており、特にBtoBビジネスの拡大が今後の成長の鍵になると見ています。また、金融庁の規制強化が進む中で機関投資家の参入が増えることを予想し、ガバナンスとセキュリティのレベルをさらに引き上げる方針を示しています。

さらに、ビットバンクはWeb3に特化した投資会社を設立し、ライトニングネットワークやAIといった新技術への投資を進める意向を表明しています。ライトニングネットワークの活用により、ビットコインの入出金にかかるコスト削減やスピードの向上を図り、ユーザーにとっての利便性を高めることを目指しています。

暗号資産業界の課題と展望

暗号資産市場は、依然として多くの課題を抱えています。特に、ステーブルコインの収益化やユースケースの発掘、IEO(Initial Exchange Offering)の情報開示の不十分さといった問題が指摘されています。廣末氏は、これらの課題に対処するため、業界全体でのルール整備が必要であると強調しています。

[伊藤 彩花]

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