南海トラフ地震の仮設住宅に二重被災の懸念、政府の対応は?
南海トラフ地震の仮設住宅問題:二重被災のリスクが浮き彫りに
南海トラフ地震の発生が懸念される中、その被災地における仮設住宅の配置が、予期せぬ「二重被災」を招く危険性が指摘されています。朝日新聞社の調査によれば、巨大津波の被害が予想される14都県のうち、5県が用地を確保した仮設住宅約2万7千戸は、大雨による洪水のリスクがある区域に含まれていることが明らかになりました。これは、全体の15%にあたります。
この問題は単に仮設住宅の配置が不適切であるという以上に、防災計画の根本的な見直しを求める声を高める要因となっています。能登半島地震の際にも、石川県輪島市と珠洲市の仮設住宅が豪雨による床上浸水の被害を受けるなど、既に現実の問題として浮上しているのです。
防災力の強化とその課題
こうした状況を踏まえ、政府は内閣府防災部門の人員を大幅に拡充する方針を打ち出しました。これは、南海トラフ巨大地震をはじめとする大規模災害に対応するための地域防災力を強化する狙いがあります。しかし、一方で増員に対する限界も指摘されています。防災担当の現場からは、「人材不足が深刻で、増員のためのリソースも限られている」との声が早くも挙がっているのです。
また、災害対策基本法に基づき、市区町村が防災対応の一義的責任を負うものの、財政的・人員的な余裕が十分でない自治体が多いという現実があります。国と地方自治体の連携がスムーズに行われないケースも少なくなく、この点をどう改善していくかが問われています。
政府は、地域防災担当部署の新設を含めた体制の抜本的拡充に踏み切りましたが、実際にこれが機能するのかどうかは未知数です。特に、出向や任期付き採用の職員が多い内閣府にとって、生え抜き職員の育成が課題となっています。
南海トラフ地震臨時情報からの教訓
南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されたことを受け、東北地方では日本海溝・千島海溝地震への対策を考える連絡会が開催されました。ここでは、今回の臨時情報に関わる教訓を今後の防災にどう活かすかが議論されました。後発地震に備えるための情報共有や対応策の強化が求められています。
特に、情報が出された際にどのように迅速に対応するかは今後の課題です。このような会合での議論を通じて、地域ごとの特性を踏まえた防災対策を構築していくことが求められます。
地域ごとの特性を活かした防災対策の構築へ
南海トラフ地震に限らず、日本は常に大規模な自然災害のリスクを抱えている国です。仮設住宅の配置問題や防災人員の不足といった課題は、全国の自治体が抱える共通の問題です。しかし、地域ごとに異なる自然環境や社会状況を考慮に入れた対策が不可欠です。
例えば、洪水リスクが高い地域では、仮設住宅を配置する際に、地形や水害履歴を詳細に調査し、より安全な場所を選定することが求められます。また、人材不足を補うためには、地域の住民を巻き込んだ防災訓練や教育を通じて、地元の防災力を高める取り組みも有効です。
さらに、地域間の情報共有を活発にすることで、各地の成功事例や失敗から学ぶことができるでしょう。これにより、全体としての防災力を底上げすることが可能となります。
こうした取り組みを積み重ねていくことで、災害に強い地域社会を築くことができるのかもしれません。災害はいつどこで起きるか分からないからこそ、準備を怠らず、確実な防災対策を講じていく必要があります。読者の皆さんも、日頃から防災意識を高め、いざという時に備えておくことを心がけていただければと思います。
[鈴木 美咲]