佐野慈紀氏、右腕切断を乗り越え「ピッカリ投法」で再起を果たす
佐野慈紀氏、逆境を乗り越えて再びマウンドへ:「ピッカリ投法」の復活
プロ野球で活躍したかつての右腕、佐野慈紀氏が、右腕を失うという大きなハードルを乗り越え、再びピッチャーズマウンドに立ちました。彼が選んだ新たな武器は、左腕から繰り出す「ピッカリ投法」。この投法を披露したのは、神宮球場で開催された学童野球大会「くら寿司トーナメント2024 18thポップアスリートカップ」の始球式でした。
今年5月、糖尿病による感染症の悪化で右腕を切断した佐野氏。人生におけるこの大きな転機を迎えた彼は、それでも野球を諦めることなく、左腕での投球に挑戦することを決意しました。そして11月から始めた左投げの練習を経て、ついにこの日、多くの子供たちの前でその成果を披露しました。
逆境を力に変える姿勢
佐野氏の姿には、逆境を力に変える強い意志が感じられます。彼は「右腕を失ったが、落ち込むことなく様々なことにチャレンジしていきたい」と述べ、この始球式を子供たちへのエールとして捉えていました。感染症との戦いの中で、彼は「透析や手術の可能性もあるが、何度もこのようなことがあるだろう。いちいち落ち込んでいられない」と語り、前を向き続ける姿勢を貫いています。
佐野氏が掲げる次の目標は、野球教室の再開です。野球を通じて多くの子供たちと接することが自身のライフワークだと語る彼は、全国を回って野球の楽しさを伝えたいという夢を抱いています。そのためにも、まずは左手での投球をさらに磨きたいと意気込んでいます。
「ピッカリ投法」で届けるメッセージ
佐野氏の代名詞である「ピッカリ投法」は、彼の人生そのものを象徴しています。帽子を左手で飛ばし、車椅子から放った投球はツーバウンドでしたが、観客からは大きな拍手が沸き起こりました。この姿は、彼がどんな状況でも諦めずに挑戦を続けることの重要性を示しています。
また、佐野氏は糖尿病の恐ろしさについても語っています。「糖尿病によって抵抗力や免疫力が落ち、様々な弊害が出る」としつつも「体に寄り添い、健康第一で過ごしてほしい」とのメッセージを発信しました。彼自身、どんな状況でも前向きに対処する姿勢を持ち続けることの大切さを、多くの人々に伝えています。
野球への愛と新たな希望
入院生活が続く中でも、佐野氏は野球への愛を再確認する機会を得ています。彼は「野球は面白いし、楽しい」と語り、プロ選手時代の自分を一歩引いた視点から、純粋な野球ファンとしての楽しさを再発見しました。これは、彼が次のステップに進むための大きな原動力となっているようです。
[山本 菜々子]