松任谷由実が語る「優れた声」:YOASOBIや平原綾香も注目
松任谷由実が語る「優れた声」とは?
松任谷由実、通称ユーミンが、彼女が考える「優れた声」の持ち主について語る場面は、彼女の音楽に対する深い洞察を垣間見ることができる貴重な瞬間だ。最近、話題となっている武部聡志氏の著書『ユーミンの歌声はなぜ心を揺さぶるのか 語り継ぎたい最高の歌い手たち』においても、ユーミンの声の魅力が取り上げられている。彼女自身の声ももちろん特別だが、彼女が他のアーティストをどう評価し、どのような声を「優れた声」としているのかは興味深い。
声が持つ「波動」とは何か
ユーミンが語る声の「波動」とは、単に音としての響き以上のものだ。彼女の声がステージで発せられるとき、その波動が演奏者にも観客にも伝わり、心を揺さぶる。彼女自身、「ホーミーみたいな」と表現するその波動は、テクニックの範疇を超えたものである。これは、彼女が幼少期に自分の声を初めてテープレコーダーで聴いた時の驚きから始まっている。彼女の声は、当時「変な声だな」と思われたが、その独特の質感こそが、彼女を特別な歌い手としている。
ユーミンは、声が単なる楽器としての機能を超えて、表現の一部であると考えている。彼女は、自分の曲に合わせて声の出し方を変えることができるが、それは彼女が「器用」だからではなく、むしろその曲に最も適した表現を直感的に見つけることができるからだと語る。
現在の音楽シーンでの「優れた声」とは
ユーミンは、現代の音楽シーンにおいても、声が持つ独自性が重要であると考えている。彼女が挙げる歌い手には、YOASOBIのikura、平原綾香、松田聖子などがある。特に、平原綾香については、彼女が持つ「倍音」や「波動」に触れ、現在の彼女が過去よりもさらに優れていると評価している。
また、ikuraについては、彼女がステージで英語のMCをしている時の声が非常に印象的だと語る。彼女の声は、YOASOBIとしての活動と、幾田りらとしての活動とで異なる側面を持っており、その多様性が彼女の魅力の一つとなっている。
声の「色」と「温度感」
ユーミンの音楽において、声は色彩感覚と密接に結びついている。彼女は、曲を提供する際に、その声の「色」や「温度感」をイメージしながら作曲すると語る。これは、音楽が聴く人に与える感覚や情景をより具体的にするための手法であり、彼女の作品が時を経ても色褪せない理由の一つである。
音楽監督の武部聡志氏も、ユーミンの音楽が持つ「温度や湿度」を表現することの重要性を強調している。彼は、ユーミンの楽曲が持つ情景や感情を音楽で再現することを心掛けており、それがユーミンの音楽をさらに深いものにしている。
ユーミンと武部氏の長年の共演は、二人の間に強固な信頼関係を築き上げ、彼らの音楽に対する情熱と探求心を支えている。彼らの関係は、まるで登山家のパーティーのようであり、共に新たな頂を目指し続けている。
松任谷由実の音楽は、彼女の独特な声と、それを支える多くの才能によって形作られている。彼女が「優れた声」と評する歌い手たちは、それぞれに異なる魅力を持ち、その声が彼らの音楽を特別なものにしている。音楽の世界で声が持つ影響力は計り知れず、ユーミンの選ぶ声の持ち主たちは、その証となっている。
[田中 誠]