IT
2024年12月23日 08時30分

中古スマホ市場の急成長とメルカリの新たな戦略

中古スマホ市場の進化とその背後にある社会的動向

中古スマホ市場が今、大きく変わりつつあります。MM総研の調査によれば、2023年度の中古スマホ販売台数は前年比16.6%増の約270万台に達しました。そして2024年度には315万台、2028年度には438万台にまで拡大する見通しです。この市場の拡大は一時的な流行に留まらず、社会的な動向や消費者の意識の変化に深く根ざしています。

中古スマホ市場の成長を支える背景として、まず考えられるのは、2019年の法改正です。この法改正により、スマホの端末料金と通信料金を分離して販売することが義務付けられ、端末の実際の価格が消費者に明確に示されるようになりました。それまで「実質1円」などの格安販売が一般的だったため、多くの消費者は新しい端末を手にすることが簡単でした。しかし、分離販売の導入により、端末の価格が際立ち、新品の購入に慎重になる消費者が増えたのです。

この状況を受けて、中古スマホの需要が急増しました。特に、ゲオや伊藤忠商事傘下のBelong(ビロング)が展開する中古スマホ市場は、躍進を続けています。ゲオのリユース事業は2025年3月期の上半期には40%増の成長を見せており、Belongも創業5年で売上を50倍にまで伸ばすという快挙を遂げています。

消費者のニーズと中古スマホの魅力

中古スマホを選ぶ理由は多様で、人それぞれです。ゲオの藤巻亮さんによれば、30~50代の男性や外国人が主な顧客層ですが、近年では新品価格の高騰もあり、節約志向の強い主婦層や女性の購入も増加しています。この動きは、生活費全体の見直しが進む中で、スマホの購入に対してもコストパフォーマンスを重視する傾向が強まっていることを示しています。

また、Belongが運営する「にこスマ」では、中古スマホを初めて購入する人が7割に達しており、これは中古市場が新たなユーザー層へのアプローチを成功させていることを示唆しています。特に、スマホをメイン機として使用することが多く、壊れたスマホを買い替えるまでの「つなぎ」としての需要や、動画視聴用・撮影用の2台目としての需要も根強いです。古いiPhoneを使って「昔風の写真」を撮影する若者も増えており、スマホの利用法が多様化していることがわかります。

ビジネスシーンでの中古スマホの可能性

個人利用だけでなく、ビジネスの現場でも中古スマホの需要は広がっています。Belongの大野正稔さんは、個人で飲食店などを経営する事業者が会計・注文システムの導入や、タクシー内での利用など、DX(デジタルトランスフォーメーション)のタッチポイントとして中古スマホやタブレットを利用するケースが増えていると話します。この動きは、中古スマホが単なる「通信手段」から、多様なビジネスニーズに応える「道具」へと進化していることを示しています。

メルカリの新たな試みと中古市場への影響

メルカリは、フリーマーケットアプリ「メルカリ」を通じて中古スマホ市場に新たな風を吹き込んでいます。最近始まったサービス「買取リクエスト」は、出品者が事業者に直接商品を買い取ってもらう機能で、売れ残りを減らす狙いがあります。これにより、メルカリは個人間取引の利便性を維持しつつ、商品が売れやすくなる仕組みを提供しています。

また、メルカリはクレジットカード「メルカード」に新色ブラックを追加し、より多様なユーザーに対応しています。このカードはメルカリアプリで利用と管理が完結するため、ユーザーにとって使い勝手が良く、メルカリでの消費をさらに促進する役割を果たしています。

こうした中で、中古スマホ市場はまだまだ成長の余地を残しています。社会全体の節約志向が強まる中、消費者は賢く選ぶことを求められ、企業はそのニーズに応えるためにさらなるサービスの向上を目指しています。中古スマホ市場の成長は、消費者の生活スタイルや価値観の変化を映し出す鏡のような存在となっているのです。

[高橋 悠真]

タグ
#メルカリ
#中古スマホ
#節約