日鉄エンジニアリングがCO2回収・貯留事業で未来を切り拓く!2050年カーボンニュートラルへ向けた挑戦
日鉄エンジニアリングが先駆けるCO2回収・貯留事業の未来
日鉄エンジニアリング(以下、日鉄エンジ)が、CO2の回収・貯留(CCS)施設の基本設計業務を日本製鉄など3社から合計8件受注した。これは、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「先進的CCS事業」の一環である。同社は新しく立ち上げたCCS事業推進部を通じて、この分野での競争力を強化し、2050年のカーボンニュートラル目標達成を目指している。
CCS事業の重要性と日鉄エンジの役割
CO2の排出削減は、地球温暖化の緩和において最も緊急かつ重要な課題の一つである。産業界では、CO2の排出を抑える技術の開発と普及が求められており、CCS技術はその一つとして注目を集めている。CCSは、産業プロセスで発生するCO2を分離・回収し、貯留することで大気中への排出を防ぐ技術である。
日鉄エンジは、これまでの石油・ガス掘削施設での豊富な経験を生かし、CO2の分離・回収から液化・貯蔵、パイプライン輸送、貯留に至るまで、CCSに必要な各種施設の整備をワンストップで提供する体制を整えている。今回の受注は、その実力を示すものであり、同社の技術力とプロジェクトマネジメント力が高く評価されていることを物語っている。
各地で進む具体的なCCSプロジェクト
日鉄エンジは、日鉄から3件の受注を含む8件の基本設計業務に携わる。その中には、日本海側東北地方で計画されているCCS事業が含まれており、九州製鉄所大分地区で分離・回収したCO2を海上輸送し、日本海沿岸の海底下に貯留する構想がある。この他にも「首都圏CCS事業」や「大洋州CCS事業」など、異なる地域や規模のプロジェクトが進行中である。
さらに、INPEXや三菱商事からも受注しており、これらのプロジェクトを通じて、日鉄エンジは国内外のCCS事業をリードする存在として成長を続けている。これらのプロジェクトが実現すれば、CO2の大規模な削減が期待され、地域社会への貢献も大きい。
汚泥燃料からの新たな展開
日鉄エンジは、CCS事業だけでなく、環境負荷を低減する他の取り組みも進めている。その一例が、名古屋市および北九州市で運営されている下水汚泥燃料化システム「ジェイコンビ」である。このシステムで製造される汚泥燃料が「菌体リン酸肥料」として登録されたことにより、下水汚泥資源のハイブリッド活用(燃料化&肥料化)が進められている。
これにより、地域の需要に応じた形で肥効性のある肥料原料として有効利用される予定であり、資源の循環利用がさらに促進される。これは、持続可能な社会を目指す上で重要なステップであり、日鉄エンジの革新的なアプローチが評価される理由の一つである。
未来への展望と課題
日鉄エンジが推進するCCS事業は、技術的な挑戦だけでなく、経済的な視点からも大きな可能性を秘めている。中長期的には、年間数千億円規模の事業展開が見込まれており、これが実現すれば、同社の成長のみならず、日本全体のCO2削減目標達成に寄与する。
しかし、CCS技術の普及には、技術的な課題やコスト削減、社会的な理解と受容など、解決すべき問題も多い。日鉄エンジのような企業が先頭に立ち、技術開発を進めることで、これらの課題を乗り越え、持続可能な未来を築くことが期待される。
2050年のカーボンニュートラルに向けて、日鉄エンジの取り組みは、ますます重要性を増していくことだろう。同社の今後の展開に注目が集まっている。
[松本 亮太]