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2024年12月24日 17時33分

ノーベル平和賞受賞の被団協、AIで未来へ核廃絶を推進

ノーベル平和賞が照らす未来への道:被団協の新たな挑戦

2023年のノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、核兵器廃絶に向けて新たな一歩を踏み出しました。田中熙巳代表委員は、授賞式でノーベル委員会から「核廃絶について世界の世論を大きくしてほしい」との要望を受け、改めてその使命の重さを実感したと語ります。実際、来年の被爆80年を迎えるにあたり、「証言の大運動」を展開する意欲を示し、核兵器のない未来を目指す活動に拍車をかけています。

証言が紡ぐ未来のための物語

被団協は、被爆者の証言を国内外に広げることに注力しています。田中氏は「被爆者の証言を日本だけでなく世界に向けて広げていきたい」と強調し、核兵器廃絶へ向けた決意を新たにしています。この活動は、単なる過去の記憶の保存ではなく、未来への希望を紡ぐ大切な物語となります。

AIが語り部となる時代の到来

近年、AIを活用した「語り部」活動が進んでいます。被爆者がその場にいなくても、事前に撮影した映像からAIが質問に沿った回答を選び出し、疑似的な対話を可能にするシステムが開発されました。この技術は、神奈川県の継承推進事業の一環として導入され、被爆体験の伝承において新たな可能性を開きます。

例えば、横浜市で行われたプロジェクトでは、93歳の被爆者西岡洋さんが約170の質問に答える形で撮影が行われ、AIがその回答を選び出す仕組みが整えられました。これにより、被爆者のいない未来においても、その声を次世代に届けることが可能になります。

このようなAI技術の活用は、単に証言を保存するだけでなく、対話形式を通じてより深く理解を得る手助けとなります。東京大学の渡辺英徳教授は、「被爆者から直接話を聞けなくなるのは避けがたい状況だ。AIを活用するなど時代に合わせて伝わりやすい技術を取り入れ、記憶を受け継いでいくことが重要だ」と述べ、技術革新の意義を強調しています。

歴史をつなぐ新たな技術とその課題

広島市も、AIによる疑似対話装置の製作を進めており、被爆者5人の証言を英語でも利用可能にする計画を立てています。これは、国際的な平和学習の一環として、広島平和記念資料館に設置される予定です。

このようなAI技術の導入は、被爆者のいない時代を見据えた新しい試みであり、未来への大きな一歩です。しかし、AIによる語り部は、あくまで補助的な役割に過ぎません。人間の感情や経験を完全に再現することはできず、その限界を理解した上での活用が求められます。

被団協の田中氏が指摘するように、来年の被爆80年という節目は重要な意味を持ちます。過去の記憶を忘れず、未来への教訓として活かすためには、技術と人間の協力が必要です。新しい技術を取り入れつつも、被爆者の生の声を大切にし、次の世代にしっかりと伝えていくことが求められます。

核兵器のない世界を目指す道のりはまだまだ続きますが、被団協の活動が示すように、一歩一歩の努力が未来を築く力となることを信じてやみません。私たち一人ひとりが、この物語の一部として何ができるかを考えることが、核のない平和な未来への鍵となるでしょう。

[佐藤 健一]

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