国際
2024年11月26日 07時20分

韓国経済、トリプルジレンマに直面!尹錫悦政権の挑戦とトランプ氏の影響

韓国経済、トリプルジレンマに直面:健全財政と景気浮揚、金利政策の狭間で

韓国経済が現在直面している課題は、複雑なトリプルジレンマである。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の政権は、健全財政と景気浮揚の狭間で揺れ動き、金利政策の選択も複雑な状況にある。これにより、韓国経済は多層的な圧力に直面している。

韓国企画財政部によれば、尹政権の経済哲学は「健全財政」である。来年度の予算案では、支出増加率を3.2%に抑え、緊縮財政を強調している。しかし、この方針が内需の回復には不十分であるとの批判が出ている。実際、小売り販売や雇用状況のデータは、内需の回復が容易ではないことを示している。特に、20代以下の若年層の賃金雇用の減少は深刻で、2017年以降最大の減少幅を記録している。

さらに、韓国経済の柱である輸出も、今後の不確実性が高まっている。韓国銀行の報告によれば、7-9月期の輸出は前年同期比で減少し、保護貿易主義の再来が予想されるトランプ氏の再執権が韓国の輸出に与える影響は重大であるとされる。対米輸出額の減少が予測されており、これは韓国経済全体に波及する可能性がある。

このような状況の中で、景気浮揚のために財政を拡大することは、国の借金増加というリスクを伴う。韓国の国家財政運用計画によれば、GDP比赤字の割合は2.9%で、緊縮財政にもかかわらず、財政準則限度の3%に近づいている。追加補正予算が現実化すれば、赤字国債の発行が避けられず、国の債務はさらに増加することが懸念されている。

一方で、金利政策も明確な方向性を欠いている。景気浮揚のためには金利を引き下げる必要があるが、物価と不動産市場への影響を考慮すると、容易に決断できない状況である。韓国銀行の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁も、為替相場を考慮する必要があると述べており、金利政策の決定はますます複雑になっている。

金融通貨委員会で金利据え置きが予想されているが、成長率の鈍化が続けば、年内に追加利下げが避けられない可能性もある。これに対し、延世大学のキム・ジョンシク名誉教授は、経済政策チーム間の不協和音が国民に混乱をもたらしていると指摘する。彼は、高金利状況下での財政緩和と金利引き下げ後の引き締めという「運用の妙」を活かすべきだと述べている。

トランプ氏の起訴取り下げ:現職大統領の司法的特権

一方、アメリカではトランプ次期米大統領に関連する法的問題が新たな展開を迎えている。米検察当局は、トランプ氏が起訴された議会襲撃事件と機密文書の取り扱いに関する2件の連邦刑事訴訟について、取り下げを申請した。この動きは、現職大統領を起訴できないという司法省の方針に基づいている。

ジャック・スミス特別検察官は、トランプ氏が2020年大統領選で敗北した結果を覆そうとした事件について、起訴を取り下げるよう連邦地裁に要請した。これは憲法上の規定により、現職大統領が起訴されないという方針に従ったものである。トランプ氏が2期目の任期を終えた後に、再び起訴される可能性は残されている。

トランプ氏の広報担当者は、起訴取り下げについて「法の支配の大きな勝利」と表明し、トランプ氏自身も司法省の捜査や起訴を「政治的動機に基づくもの」と批判している。

これらの動きは、韓国経済のトリプルジレンマに影響を与える可能性がある。特に、トランプ氏の再執権が現実となれば、保護貿易主義の強化が韓国の輸出に大きな影響を及ぼすと予想される。

このように、韓国と米国の経済・政治動向は相互に影響を及ぼし合い、今後の国際経済の行方を左右する可能性がある。韓国は、この複雑な局面を乗り越えるために、国内外の情勢を慎重に見極め、柔軟かつ的確な政策対応が求められている。

[山本 菜々子]