生成AIが教育とサイバーセキュリティに与える影響とは?
教育現場とサイバーセキュリティにおける生成AIの影響
教育現場とサイバーセキュリティの分野で、生成AIがもたらす影響は広範囲にわたっています。教育の現場では、生成AIが学生と教員の両方に新たな可能性を提供しつつ、その利用に関する懸念も浮上しています。一方、サイバーセキュリティの領域では、生成AIが攻撃者と防御者の両サイドで活用され、複雑なサイバー攻撃の一助となる一方、防御策の開発にも役立っています。
教育現場における生成AIの活用と課題
大学教育において生成AIの活用は、学生の学び方を変革しつつあります。例えば、お茶の水女子大学の伊藤貴之教授は、学生が生成AIを使って不完全な回答を修正する課題を設定することで、自ら考える力を養う取り組みをしています。これにより、学生は単にAIを利用するだけでなく、その限界を理解し、より質の高いアウトプットを生み出すスキルを身につけています。
また、生成AIは教員の負担軽減にも寄与すると期待されています。教員の「忙しすぎ問題」は深刻で、多くの教員が事務作業や資料作成に追われています。生成AIを活用すれば、これらの作業を効率化し、教員が本来の研究や教育改善に集中できる時間が増える可能性があります。例えば、大量の文献を要約したり、講義資料を生成するなどの業務を自動化することで、教員の負担を大幅に軽減することができます。
ただし、教育現場で生成AIを導入する上での課題も残っており、特に生成AIの不正利用を防ぐための対策が求められています。例えば、数学やプログラミングのように明確な正解が存在する分野では、生成AIを使った不正が懸念されます。そのため、生成AIの効果的な活用法や不正の見分け方に関する教育が必要です。
生成AIとサイバーセキュリティの共存
サイバーセキュリティの分野では、生成AIが新たな脅威を生み出す一方で、防御策の開発にも貢献しています。NTTデータの新井悠氏によると、生成AIはフェイクニュースの生成やディープフェイクを用いた攻撃に利用されるようになっています。例えば、バイデン大統領の声を模した偽の電話がニューハンプシャー州で5000名以上にかけられた事件は、生成AIが現実の政治に与える影響の一例です。
また、フェイクニュースの拡散も問題となっています。香港のニュースサイト「BNN Breaking」が生成AIを使って虚偽のニュースを作成し、それが拡散されるケースが報告されています。これにより、大手ニュースサイトが誤情報を報道する事態が発生し、最終的にはサイトが閉鎖に追い込まれました。
一方で、生成AIは防御側にも新たなツールを提供しています。生成AIを利用してサイバー攻撃のパターンを予測し、防御策を自動的に構築する技術が開発されています。これにより、サイバーセキュリティの専門家はより迅速かつ的確に脅威に対処することが可能になっています。
未来への展望
生成AIがもたらす変革は、教育とサイバーセキュリティの両分野で続くでしょう。教育現場では、生成AIの普及が進むことで、学生の学び方がさらに変化し、個別化された教育が可能になると期待されています。学生が自ら生成AIを活用して学ぶ姿勢を育むことで、将来的にはAIと共存する新たな学びの形が生まれるかもしれません。
[山本 菜々子]