トランプ再選!習近平体制に学ぶ権力集中のリスク
トランプ政権再来と習近平体制の類似点に見る政治の行方
ドナルド・トランプ氏の再選が決まり、再び世界中の注目が彼に集まっています。まだ政権が始まっていないにもかかわらず、アメリカの政治舞台はトランプ一色に染まりつつあります。彼の政策や人事は、かつての習近平体制との類似性が指摘されており、今後の政治的動向に関心が寄せられています。
トランプ氏は、一期目の経験から学んだ結果として、今回の政権では自らの意向に従うイエスマンで固めるという方針を打ち出しています。これにより、かつての政権で直言を行うことができたジェームス・マティス国防長官やジョン・ケリー首席補佐官のような人材は排除され、トランプ一派が政権の中枢を担うことになりそうです。これは習近平氏が中国で行った「自派重視」の手法と非常に似ています。
習近平体制の教訓: 権力集中のリスク
習近平氏は2018年、中国共産党のトップとして、憲法を改正し、自らの名を刻み込みました。この動きは、彼が国家主席としての任期制限を撤廃し、名実ともに中国の最高権力者としての地位を確立するためのものでした。しかし、こうした権力の集中は、正確な情報と多様な意見を受け入れる能力を欠如させ、国家の硬直化や経済停滞を招く結果となりました。
トランプ氏もまた、同様の道を辿る可能性があります。彼の周囲に直言できる人物が不在となれば、政策の歪みや、国内外における不安定な状況を招くことになるでしょう。特に、共和党が上下両院で過半数を占める現状では、トランプ氏の権力はルーズベルト大統領以来の強大なものになると予測されています。しかし、権力の絶頂こそが凋落の始まりであるという歴史の教訓を無視することはできません。
イーロン・マスクとトランプ政権の未来
注目すべきは、トランプ政権における実業家イーロン・マスクの役割です。彼は「政府効率化省」の長に内定しており、トランプ氏の親友として知られています。しかし、マスク氏は親中派としても知られ、テスラの上海工場は彼のビジネスにおける重要な拠点となっています。このため、彼はトランプ政権の対中強硬姿勢との間で、難しい選択を迫られるかもしれません。
トランプ氏がマスク氏を政権の中枢に据えることは、一見すると多様な意見を取り入れる姿勢のように見えますが、実際には政策の一貫性を損なう可能性があります。特に、他の幹部たちが超強硬派である中で、マスク氏の親中姿勢は異質であり、内部での意見の衝突を引き起こすかもしれません。
高齢化する指導者たちの未来
トランプ氏は78歳という高齢で次期大統領に就任する見込みです。これは、加齢に伴う体力や判断力の低下が懸念される年齢であり、政策運営において細部が疎かになるリスクがあります。この点においても、習近平氏と通じるものがあります。71歳となった習近平氏もまた、権力を一人に集中させた結果、疲労が見え始めています。
習近平氏は、経済回復を優先する政策を打ち出しつつありますが、これはゼロコロナ政策の影響でガタガタになった経済の立て直しを求める声に応えるためです。同様に、トランプ氏も高齢化に伴う体力の限界を考慮に入れた政策運営を求められることになるでしょう。
「強運」に頼る政治の限界
トランプ氏も習近平氏も、「強運」によってこれまでの政治的危機を乗り越えてきました。しかし、運に頼る政治には限界があります。特に、権力が集中し、イエスマンに囲まれた状態では、誤った判断が蓄積されやすく、最終的には大きな失敗を招く可能性があります。日本のことわざ「桐一葉落ちて天下の秋を知る」にあるように、小さな変化を見逃さず、適切な判断を下すことが、指導者としての責務であることを忘れてはなりません。
今後のトランプ政権の動向は、世界中が注目するところです。彼がどのようにして権力を行使し、国内外の課題に対処していくのか、そしてその過程でどのような教訓を得るのか、我々は注視していく必要があります。トランプ氏が再び政権の座に就くにあたり、習近平氏の失敗から学び、よりバランスの取れた政治運営を行うことが求められるでしょう。
[佐藤 健一]