2023年ドラマ総括:宮藤官九郎作品が話題に
2023年のドラマシーンを振り返る:期待を超える作品と意外な失望
2023年、テレビドラマ界は多彩なテーマとスタイルで視聴者を魅了した年となりました。しかし、その一方で期待を裏切る作品もあったことは否定できません。女性1000人のアンケート結果から、今年の「よかった」ドラマと「がっかり」ドラマが明らかにされました。
女性の視点から見る「よかった」ドラマ
5位にランクインした『燕は戻ってこない』(NHK)は、桐野夏生の原作を基に不妊や代理出産といった女性の問題に切り込んだ作品です。ドラマの中で描かれるキャラクターたちの身勝手さや、社会の冷徹さは見る者に強い印象を残しました。視聴者の一人は「このドラマで代理母というシステムに対する考え方が変わった」と語っています。社会問題を扱う作品として、NHKだからこそ実現できた挑戦的なドラマといえるでしょう。
4位の『宙わたる教室』(NHK)は、夜間定時制高校を舞台にした物語です。新任の理科教師が生徒たちに希望を与える様子は、決してお涙頂戴ではなく、視聴者の心を静かに揺さぶりました。この作品は、登場人物の成長を丁寧に追いかけることで、視聴者に深い共感を呼び起こしました。
3位の『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は、長崎県・端島と東京を舞台にした壮大なドラマです。神木隆之介の演技はもちろん、脚本家の野木亜紀子による細部まで考え抜かれた脚本が視聴者を魅了しました。過去と現在を行き来するこの物語は、まるで家族の歴史を一緒に歩んでいるかのような感覚を味わわせてくれます。
くどかんが描く新たな日常と非日常
2位に選ばれた『新宿野戦病院』(フジテレビ系)と、1位の『不適切にもほどがある!』はどちらも宮藤官九郎が脚本を手がけました。『新宿野戦病院』は、コロナ禍初期の不安や違和感をユーモラスに描きつつも、社会問題の核心に迫る作品でした。『不適切にもほどがある!』は、昭和と令和をタイムスリップする教師の物語で、今年の流行語大賞にもなったほどの話題作です。どちらも宮藤官九郎らしい軽快なテンポと深いテーマが融合した作品でした。
がっかりドラマの影に潜む課題
しかし、すべてのドラマが成功を収めたわけではありません。特に「がっかり」部門で1位となったのは『君が心をくれたから』(フジテレビ系)です。この作品は、パティシエを目指す主人公が恋人を生き返らせるために五感を差し出すという奇抜なストーリーが視聴者の賛否を分けました。期待された月9枠での失敗は、制作側にとって痛手だったに違いありません。
また、木村拓哉主演の『Believeー君にかける橋ー』(テレビ朝日系)が2位にランクインしました。豪華キャストを揃えながらも、ストーリーやキャラクターが視聴者を引き込むことができなかった点が指摘されています。視聴者は、キャストの知名度や人気だけに頼らず、もっとストーリーやキャラクターを大切にしてほしいと感じたようです。
木村拓哉の挑戦と視聴率の行方
2023年のドラマ界は、多様なテーマに挑戦し、視聴者に新たな視点を提供しました。良作もあればがっかりした作品もある中で、視聴者の期待はさらに高まり、来年の新たな展開に期待が寄せられています。時代とともに変わる視聴者のニーズに応えるため、ドラマ制作はますます多様化し、創造力が試される時代に突入しています。
[松本 亮太]