経済
2024年11月26日 09時19分

現代自動車の未来戦略:米国・日本市場でのEV攻勢とBYDへの対抗

現代自動車の戦略的進化:変動する市場での挑戦と機会

韓国の現代自動車グループは、次期CEOホセ・ムニョスのリーダーシップの下で、変動する世界の自動車市場に対応するための大胆な戦略を展開しています。ムニョス氏は、トランプ政権下での電気自動車(EV)関連政策の変更が予想される中、現代自動車がどのようにして米国市場での地位を維持し、さらに拡大しようとしているのかを詳細に説明しました。

米国市場は、現代自動車にとって極めて重要な市場です。現在、テスラに次ぐEV販売2位を誇る現代は、来年ジョージア州サバンナに新工場を開設し、米国での生産能力を2倍にする計画を進めています。この動きは、EVが今後も主要な技術であり続けるという同社の信念に基づいています。ムニョス氏は、「当社が米国への投資を決定したのは、前回のトランプ政権下だったことを忘れないで欲しい」と述べ、政治的変化に左右されない長期的なビジョンを強調しました。

トランプ政権が再び誕生した場合、EV補助金の廃止や関税の導入が懸念されていますが、ムニョス氏はこれに対する準備が整っていると自信を見せています。特に、EVだけでなくハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも注力することで、市場の変動に適応する戦略を持っています。補助金が廃止されたとしても、ハイブリッド車の需要が増加する可能性が高いと彼は予測しています。

日本市場での復活:軽EV「キャスパーEV」の挑戦

一方で、現代自動車は13年ぶりに再進出した日本市場でも攻勢をかけています。来春には、日本で人気の高い小型車市場に「キャスパーEV」を投入予定です。日本市場では、これまで中型EV「アイオニック5」や小型SUV「コナEV」などのラインナップに限られていましたが、「キャスパーEV」の導入で選択肢が広がります。

日本市場での競争は激化しており、日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」、中国のBYD「ドルフィン」などが競合として挙げられます。特にBYDは、日本市場での実績を伸ばしており、現代自動車にとっては大きな挑戦です。しかし、現代自動車は「キャスパーEV」を通じて、価格競争力と技術力を武器に市場シェア拡大を狙っています。

現代モービスの成長戦略と中国BYDの挑戦

現代自動車グループの部品メーカーである現代モービスも、新たな成長戦略を掲げています。2033年までにグローバルトップ3の自動車部品メーカーになることを目標に、収益基盤の多角化と未来モビリティ技術の強化を進めています。特に、電動化車両とソフトウェア中心の自動車(SDV)の開発に注力し、グループ外の完成車メーカーへの販売比率を引き上げる計画です。

また、中国のBYDは韓国市場への参入を計画しており、現代自動車と起亜に挑戦する構えを見せています。BYDは、低価格でコストパフォーマンスの高いEVを提供することで、現地市場での存在感を高めようとしています。この動きは、韓国市場の競争を一層激化させる可能性があります。

現代自動車グループは、米国、日本、韓国といった主要市場での戦略を通じて、変動する自動車産業に対応しています。政治的な変化や国際的な競争の中で、企業としての柔軟性と適応力が試されている中、同社の戦略的進化は今後の市場動向に大きな影響を与えるでしょう。

[鈴木 美咲]