染谷将太主演『BAUS』、吉祥寺バウスシアターの歴史を映画化
染谷将太主演の映画『BAUS』、吉祥寺バウスシアターの歴史を描く
映画『BAUS 映画から船出した映画館』は、吉祥寺にかつて存在したバウスシアターの閉館から始まる90年にわたる物語を描く作品です。主演の染谷将太をはじめ、豪華キャストが集結し、吉祥寺の街とその住人たちに深く根ざした映画館の歴史を紡ぎ出します。映画は、単なる娯楽の提供者としてではなく、地域社会にとっての文化的なハブとしての映画館の姿を切り取っています。
映画館の歴史を紡ぐ人々のドラマ
この作品の背景には、1925年に吉祥寺に初めての映画館「井の頭会館」が開館し、その後1951年に「ムサシノ映画劇場」が誕生し、最終的にバウスシアターとして知られるようになったという、実在の映画館の歴史があります。映画は、戦前の1927年から始まり、戦争や社会の変化を乗り越えながら、映画館を維持し続けた人々の奮闘を描きます。これだけの長い歴史を持つ映画館の物語を映画化するという試みは、日本の映画史においても極めて興味深いものです。
吉祥寺バウスシアターの創設者である本田拓夫をモデルにしたタクオ役を演じる鈴木慶一は、自身の家族の歴史とも重なる部分があると語っています。彼の両親もまた、この地域で映画文化に触れて育った背景があり、その思い出が彼の演技にも色濃く反映されています。このように、キャストの人生と映画の内容が重なる瞬間があることも、この作品の魅力の一つでしょう。
監督とキャストの思いが紡ぐ新たな映画体験
本作の監督を務める甫木元空は、青山真治監督から脚本を引き継ぎ、彼の思いを受け継ぐ形で作品を完成させました。甫木元監督は、青山監督との縁が深い大友良英を音楽担当に迎え、吉祥寺バウスシアターの歴史的背景にふさわしい音楽を作り上げています。現場では、若いスタッフが軽やかに作業を進めていたと光石研が語るように、監督のビジョンに沿って制作が進められ、各キャストがその役に命を吹き込む様子が印象的です。
橋本愛が演じるハナエは、若くして亡くなった女性として登場しますが、その魂は今も生き続けていると彼女はコメントしています。映画の中で描かれる過去の記憶や夢が、現在の私たちにどのように影響を与え続けるのかを考えさせられます。とよた真帆が演じるタネ役もまた、井の頭会館を支える重要な役割を果たし、映画館と共に歩んできた人々の生活を象徴しています。
日本映画の未来を担う若き才能たち
染谷将太が演じるサネオは、映画の未来を夢見て奮闘するキャラクターで、その情熱は観客にも伝わることでしょう。銀杏BOYZの峯田和伸が演じるハジメと共に、映画館のさらなる発展を目指す彼らの物語は、過去の映画文化に対するリスペクトと、これからの日本映画界への期待を込めたメッセージでもあります。
映画『BAUS 映画から船出した映画館』は、2025年3月21日から全国公開される予定です。この作品は、ただの映画館の歴史を描くだけでなく、そこに息づく人々の人生をも映し出しています。映画館という舞台を通じて描かれる多様な人間ドラマは、私たち自身の生活や社会との関わりを見つめ直すきっかけとなるでしょう。観客は、この映画を通じて、映画館が持つ文化的な重みと、その場を支えてきた人々の思いに触れることができるはずです。
[高橋 悠真]