国際
2024年12月28日 20時40分

フィリピン、中距離ミサイル「タイフォン」導入計画で緊張高まる

フィリピンの中距離ミサイル導入計画をめぐる緊張の高まり

フィリピンが米国から中距離ミサイルシステム「タイフォン」の調達を計画していることが明らかになり、南シナ海をめぐる緊張が一層高まっています。この動きは、台湾周辺や南シナ海での中国の覇権主義的行動に対する抑止力を強化することを目的としていますが、中国はこれに対して強く反発しています。

フィリピンは、米国との合同軍事演習「サラクニブ」の一環として、ルソン島北部に一時的に「タイフォン」を配備しました。このミサイルシステムは、射程1600キロメートルの巡航ミサイル「トマホーク」を発射する能力を持ち、中国本土も射程に含まれるため、中国側の警戒感を高めています。フィリピンのギルベルト・テオドロ国防相は、この配備が正当であり、「特定の国々を対象としたものではなく、安全保障上のリスクへの対処が目的」と強調しました。しかし、中国外務省の毛寧報道官は、これを「攻撃用の兵器であり、地域の安全にとって脅威」とし、フィリピンに対して「平和的発展」に戻るよう促しました。

地域の軍拡競争と地政学的緊張

このミサイル導入計画をめぐる緊張は、単なる軍事的対立にとどまらず、地域全体の軍拡競争を誘発する可能性があります。フィリピンにとっては、南シナ海における自国の排他的経済水域(EEZ)の防衛を強化するための措置であり、包括的群島防衛構想(CADC)の一環として、2024年に始まった能力強化の一環です。しかし、これはまた、中国が南シナ海での軍事的優位性を維持しようとする動きに対抗するものでもあります。

フィリピンと中国は、南シナ海での領有権をめぐる長年の対立を抱えており、この地域はすでに複雑な地政学的なパズルの一部です。ここで各国の軍事的な動きは、まるでチェスボード上の駒のように、戦略的な意図を持って配置されているのです。しかし、このような動きが誤解やさらなる対立を引き起こす可能性もあり、慎重な対応が求められます。

フィリピンの自立と外部圧力の間で

フィリピンの戦略的選択は、自国の安全保障を維持するための自立的な行動と、外部からの圧力の間での綱渡りを強いられています。テオドロ国防相は、中国がフィリピンの行動を批判する一方で、核兵器や弾道ミサイルの能力を増強し続けていることを指摘し、「本当に地域の緊張を緩和したいなら、中国は自身の威嚇や挑発行動をやめるべきだ」と述べました。

これは、まるで古い映画のシーンのように、各国が自らの立場を強固にしようとする中で、緊張感が高まる様子を描いています。フィリピンは、自らの主権の範囲内での装備調達であることを強調し、いかなる外国の拒否の対象でもないと主張していますが、国際社会においては、その行動がどのように受け取られるかが重要です。この複雑な力関係がどのように展開していくのか、世界は注視しています。

[鈴木 美咲]

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