国際
2024年12月29日 20時40分

北朝鮮、核開発と窮状に揺れる民心

北朝鮮の苦境と核開発の狭間で揺れる民心

北朝鮮の姿がまた一つ、鮮明に浮かび上がった。12月に公開された映像は、核兵器開発を進める一方で、一般市民の生活がどれほど窮しているかを物語っている。韓国・東亜大学の姜東完教授によると、北朝鮮の経済状況は「非常に劣悪」であり、住民が手に入れることができる食料や生活必需品の不足は深刻だという。

映像には、野外市場「チャンマダン」で痩せ細った野菜を販売する人々や、路上で煮炊きするホームレスの姿が映し出されている。これらの光景は、北朝鮮の保健医療システムの崩壊を示している。市場で販売される家畜の寄生虫駆除薬は、医療が機能していないことを象徴していると言えよう。

このような状況の中、新型コロナウイルスの影響で中国との貿易が止まり、物価が高騰したことが、北朝鮮の経済悪化を一層深刻化させた。脱北者のカン・ギュリさん(仮名)は、北朝鮮の住民が「針一本も生産できない国」に住むことを嘆いていると語った。食料に限らず、あらゆる物の値段が10倍以上に跳ね上がったという。

核兵器開発と住民の不満

一方で、北朝鮮当局は核兵器開発に邁進している。2024年10月には最新型のICBM「火星19型」の試験発射に成功したと発表し、金正恩総書記は核戦力を強化する方針を強調している。しかし、住民の生活が困窮している中でのこの姿勢は、国内の不満を高めているようだ。

カンさんは「核をあんなに開発したのに、それ以外には何をしたの?」と、政権維持のために国民の犠牲を強いる金正恩政権への不満を口にする。彼女の証言からは、特に年配の世代がこの状況に強い不満を抱いていることが読み取れる。

北朝鮮の住民たちは、韓国との統一を望む声を上げている。自由を求め、より豊かな生活を期待する中で、彼らの希望はどこにあるのか。韓国では、民主主義の危機が続いており、朝鮮半島全体の緊張は高まるばかりだ。

脱北者の証言から見える北朝鮮の現実

脱北者のカン・ギュリさんが語る北朝鮮の現実は、私たちの想像を超えている。彼女は、韓国にたどり着くために命がけの脱出を遂げたが、それは北朝鮮での自由の欠如と抑圧から逃れたいという切実な願いからだった。

彼女によれば、北朝鮮では韓国ドラマを見ただけで銃殺されることもあるという。2022年には、韓国映画を見た22歳の男性が公開処刑された事例もある。北朝鮮当局のこのような厳しい取り締まりは、金正恩総書記が「民心」を恐れていることを示している。

カンさんは、北朝鮮の生活を振り返り、「生きるために食べているのか、食べるために生きているのか分からなかった」と述べた。この言葉は、北朝鮮の住民が直面している厳しい現実を物語っている。

未来への期待と不安

北朝鮮の現状を考えると、核兵器開発に注力する政府と、食料や生活必需品すらままならない住民との間のギャップは、ますます広がっているように見える。金正恩総書記は、米国への「最も強硬な対応戦略」を表明し、核・ミサイル開発を続ける方針を明確にしているが、その一方で、住民の生活が改善される兆しは見えない。

未来がどのように展開するのか、朝鮮半島の緊張は高まったままだが、変化の兆しを期待する声もある。カンさんのように、自由を求めて立ち上がる人々がいる限り、どこかに希望の光が差し込むことを信じたい。北朝鮮の住民たちが望む未来は、まだ見えないかもしれないが、その願いが無駄になることはないはずだ。

[高橋 悠真]

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