行定勲が韓国ドラマ『完璧な家族』に挑戦、日韓文化交流の新たなステージ
行定勲、韓国ドラマ『完璧な家族』に挑む:韓国ドラマの魅力とその秘密
映画監督としての豊かな経験を持つ行定勲氏が、韓国ドラマ『完璧な家族』の演出に挑んだことは、日韓間の文化交流の新たなステージを示しています。これまでは映画の世界での活動が主だった行定監督が、なぜ韓国のドラマ制作に関わることになったのでしょうか。そして、彼がこのプロジェクトを通じて発見した韓国ドラマのヒットの法則とは何だったのでしょうか。
韓国エンタテインメント業界は、映画とドラマの垣根が次第に薄れている過渡期を迎えています。韓国の地上波放送局KBSが手掛ける『完璧な家族』は、日本でもLeminoで独占配信され、国境を越えた視聴者を魅了しています。行定監督がこの作品に参加した背景には、過去の映画祭や韓国の業界との深い交流がありました。彼の名前がキャストやスタッフに広まることで、自然と彼の作品に対するリスペクトが生まれ、プロジェクトが動き出したのです。
予算と制作スタイルの違いに驚き
行定監督は、韓国でのドラマ制作における予算の潤沢さに驚きを隠せませんでした。日本ではなかなか実現できない大規模なセットが、韓国では大胆に組まれることが可能です。例えば、主人公のソニが暮らす家は、坡州にあるCJ ENMスタジオセンターの巨大な倉庫に建てられた総建築で、家そのものが物語の重要な要素となっています。天候に左右されないスタジオ撮影の利点を活かし、70日という短期間で撮影を完了できたことも、韓国ならではの制作スタイルの一部です。
日本では、特に合成を使った撮影があまり好まれない傾向がありますが、行定監督はその逆説的な新鮮さを体感しました。合成映像が持つ「不自然さ」が、かえって作品に独特の空気感をもたらすことを発見したのです。これまでの日本での制作とは異なる発想が、彼にとって新しい刺激となりました。
音楽の選択と文化的背景
音楽の選択もまた、韓国ドラマ制作の特徴の一つです。行定監督は、もっと現代的な音楽を希望しましたが、最終的な判断は制作会社に委ねられ、ドラマチックなクラシック音楽が使用されました。これにより、視聴者の感情を先行して盛り上げる手法が採用されました。韓国ドラマの歴史と文化には、音楽が物語の一部として観客を引き込む役割を果たす伝統があります。行定監督はその文化に寄り添いながら、韓国ドラマの一端を担うことに成功しました。
今後の展望と日韓合作の可能性
行定監督は、今回の経験を通じて日韓合作の可能性に新たな視点を得たと語ります。昭和の名作小説を原作にしたプロジェクトを、現代の韓国と日本を舞台に描く構想が浮かび上がりました。韓国と日本の俳優やスタッフが共に作品を作り上げることで、原作の持つ本質をより明確に表現できると考えています。
韓国ドラマの制作に携わることは、彼自身の演出家としての視野を広げ、異文化との交流を深める貴重な機会となりました。次回のプロジェクトがどのような形で展開されるのか、彼の挑戦が続く中で、新たな物語が生まれることが期待されています。
[高橋 悠真]