国際
2024年12月30日 10時12分

トランプ次期大統領とIT大手の複雑な関係:AI規制の行方は?

トランプ氏と米IT大手の微妙なダンス:利益のための新たなカタルシス

米国の政治舞台は、まるでドラマのように複雑で予測不可能です。そしてその一幕には、トランプ次期大統領と米国の大手IT企業の間に繰り広げられる微妙な関係が描かれています。トランプ氏の就任を前に、メタ、アマゾン、グーグル、アップルといったテクノロジーの巨人たちが次々と彼に支援を表明し、100万ドルの寄付を約束しています。かつては対立していた者たちが、今や同じテーブルにつこうとしているのです。

この動きの背景には、米国の反トラスト法(独占禁止法)訴訟があり、バイデン政権下で厳しい視線を向けられていたIT大手が、トランプ氏の規制緩和に期待を寄せているのは明白です。特に、トランプ氏がAI分野の規制緩和に積極的であることから、今後の訴訟や規制の緩和を狙った戦略的な動きと考えられています。

トランプ氏の側近であるイーロン・マスク氏の存在も、これらの企業にとっては無視できない要素です。マスク氏が新設される「政府効率化省」のトップに指名されたことで、彼がAI関連の規制を自分に有利なように書き換えるのではないかという懸念が広がっています。このため、IT大手はトランプ氏に接近し、マスク氏の影響力をけん制しようとしているようです。

韓国の財界に訪れる激震:非常戒厳とトランプ政権の影響

一方、韓国では非常戒厳の影響で企業の時価総額が大幅に下落し、財界は厳しい状況に直面しています。12月3日の非常戒厳以降、韓国上位20社の時価総額が37兆ウォンも減少しました。これは、韓国企業にとって大きな打撃であり、さらにドル相場の上昇が資金負担を増大させています。このような状況下で、韓国企業はトランプ政権の保護主義に対する不安を抱えています。

特に、トランプ氏がビジネスマンとしての経験を活かし、交渉において優位に立つ可能性があるため、韓国は通商外交の面で不安を募らせています。教授たちも、トランプ氏が交渉の達人であるため、安定した政局であっても大統領同士の交渉には高度な戦略が求められると指摘しています。

韓国企業はまた、ドル高によって米国への投資費用が増大することを懸念しています。サムスン電子をはじめ、多くの企業が米国での大規模投資を進めており、為替変動によるコスト増加は頭の痛い問題です。

ビザ政策の綱引き:トランプ氏とマスク氏の共鳴

さらに、トランプ氏は外国人技術者向けの就労ビザ「H-1B」を支持すると表明し、イーロン・マスク氏と足並みを揃えました。このビザ制度は、米国のハイテク業界がスキルを持つ外国人労働者を確保するために不可欠な存在です。しかし、一部の支持者や移民対策強硬派はこの制度を廃止すべきと主張しており、トランプ氏の支持表明は複雑な反応を引き起こしています。

トランプ氏のビザ政策への支持は、彼がビジネス界で築いてきたコネクションを活用しようとする戦略の一環と見ることができます。彼は自身の事業で多くのH-1Bビザを利用してきた経験を持ち、これを「素晴らしい制度だ」と評価しています。しかしながら、米国内ではこの制度が米国市民の賃金を抑制しているとの批判もあり、賛否が分かれています。

このように、トランプ氏が次期大統領として就任することによって、世界中の経済や政治に与える影響は計り知れません。IT企業から韓国の財界、そしてビザ制度に至るまで、多くのプレイヤーが新たな局面に備えています。それぞれの思惑が交錯するなか、トランプ氏がどのような手を打つのか、そしてその結果がどのように世界に影響を及ぼすのか、我々は注視を続けるしかありません。

[鈴木 美咲]

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